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透明な滴の物語V
【同性愛♀ 官能小説】

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黒い雨雲-6

厚い曇り空の向こう側、地平線には黒い雨雲が不気味に広がっていた。
風向きからすると、この街に迫ってくる模様である。

聡美はおしゃれなポーチから電話を取り出すと、登録先から佐和子を選びコールした。
電話はすぐにつながった。
電話に出た佐和子の背景から、ざわついた周囲の様子が伝わってきた。
「佐和子さん、お久しぶり。今、まずかった?なんか外にいるみたいね?」
「聡美なの?ちょうどよかった!」
電話は聞き取りにくかった。
「佐和子さん?今、どこにいるの?」
「病院なの。琴音が熱を出しちゃって」
佐和子には幼稚園に通う一人娘の琴音がいた。

聡美の顔に緊張が走る。
「え!そうだったの?それで、診察はこれからなの?」
「いや。終わって帰るところなんだけど、雨が降ってきたわ」
聡美が誰もいない中庭に目を移すと、暗い曇り空の下、地面のタイルに黒い雨粒が点々としてきたことに気づいた。
病院の玄関先で娘を抱え、降り出した雨を見て途方に暮れる佐和子の姿が浮かんだ。
「旦那さんは?」
「それが、あいにく旦那は出張で居ないのよ。こんな時に限って…」
(私が行かないと!)
聡美の心に火が入った。
「佐和子さん、そこで待っていて!私がクルマで迎えに行くから」
聡美は通勤にクルマを使っていた。
「聡美のお仕事は大丈夫なの?」
「もう終わったし、終わらなくてももう出るわ」

雨が降り出した大病院のエントランス周りは混雑していたが、佐和子は聡美のドイツ製小型車を覚えていた。
先日乗せてもらったばかりだったからだ。
無事に親子を拾うと、聡美は佐和子のマンションへ向かった。
「聡美、本当にありがとう。助かるわ。また助けてもらっちゃったわね」
「とんでもない。気にしないで」
むしろ聡美にとっては、また佐和子と会えたことが嬉しかった。
「琴音ちゃんの具合はどうなの?」



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