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惚れ薬
【その他 官能小説】

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彷徨-3

 怒りに任せたことを後悔していると、ものの五分も経たないうちに女が戻ってきた。
慌てている。忘れ物でもしたのかと見ているとその目は俺に向けられて固まった。
(ひょっとして…)
試しに笑いかけてみると女も応じて小首をかしげてウインクまで投げてくる。さきほどの高慢な態度とは別人のようだ。時間を確認すると二十分を経過したところである。まだ早い。が、効いている。
(分量が多かったからか?)
効いているのはまちがいないのだからそうとしか考えられない。

 女はつかつかとやってきた。そして俺の前に来ると周囲も憚らず、
「よかったら、どこかに行きません?いえ、行きたいの、行きましょう」
その言葉に店内の客の視線が集まった。それでなくても目立つ女である。薬の効果をまざまざと感じた。
 日も高いし仕事の途中だが、こうなったからには、
(覚悟を決めるか)
決心した俺は得意先に言い訳の電話を入れて外へ出た。

 女の腕が俺の腕に絡んでくる。何人かの男がすれ違いざまに振りかえった。ミニスカートから惜しげもなく伸びた脚は外国人のようだ。好きなタイプではないとはいえ、連れている女が羨望の目で見られるのは悪い気はしない。
(これからこの女を抱くんだ)
優越感が昂奮を煽ってくる。さらに美人だとお高くとまっている女を徹底的にいたぶってやるという嗜虐的感情、征服欲も膨らんでくる。
 男と女が絡み合うのにプライドなんか意味ないのだ。
(待ってろよ、ひいひい言わせてやる)
はずだった。それが三時間後、俺は女を置いて逃げ出していた。


 女は麻衣と自己紹介した。プロダクションに所属していると言い、女優をしているとちょっと得意げな顔をしたが、どうせAVかそれに近い類のものだろう。
 名乗るくらいだから少しは冷静なのかと思ったら、とんでもなかった。まずその脱ぎっぷりがすごかった。
 背も向けずどこを隠すでもない。ジャケットもスカートも無造作に床に放り投げ、パンティなど足を抜いてその場に踏みつけた。
 全裸になると俺に迫って、
「ねえ、早く」
服に手をかけて脱がせようとしてくる。
「自分でやるからいいよ。シャワー浴びてこいよ」
「一緒によ、一緒じゃなきゃいや」
麻衣はネクタイを引きちぎるように外すとズボンのベルトを引っ張ってくる。
「わかった、わかったから、待てよ。そうあわてるなよ」
「慌ててないわ。あなたが遅いのよ」

 俺が慌てたのは麻衣が跪いて股間の前に顔を寄せてきたからである。
(フェラチオ?)
いきなりのことで焦ったのではない。実はこの二日間飲み会が続いて風呂に入っていなかったのである。異臭、悪臭の股間。いくら錯乱しているとはいえ鼻がひん曲がるようなペニスを咥えさせるのはさすがに抵抗がある。
「待ってくれ。シャワーが先だ」
「待てないわ」
後ずさりする俺のベルトをがっしり掴んで離さない。
「後でね、とことん付き合うからさ」
「後じゃない。今なのよ」
聞く耳はなかった。
 信じられない力で遮る俺の手を振りほどくとズボンをおろし、パンツも下げると飛びつくように頬張った。
「ダメだって…」
顔を振りながら吸い立ててくる。見開いた目はうつろである。あちこちに眼球が動いている。多くの場合、フェラチオをする時は目を閉じるものだが、麻衣の形相は餌に食いついた獣であった。
「うっ、うっ、うっ」
喉を鳴らして強烈な摩擦、扱きが始まった。


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