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天国に一番近い地獄
【学園物 官能小説】

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征服!-1

 大輔があの女を渋谷で発見してから、すでに3週間が過ぎようとしていた。女の目の前に現れて、天神のことをネタに関係をせまろうかと何度考えたことだろう。しかし、あの女がしらを切り通すことは十分に考えられた。「赤の他人だ」と言われた場合、彼には取りつく島がなかった。それに、大輔自身、確証がつかめなかったことも事実だ。福岡の天神で男漁りをする淫乱女と、セント・カトレア女学園という都内でも名門のお嬢さん学校の教師。どう考えても、あまりにギャップがありすぎる。
 しかし、ギャップがありすぎるからこそ、大輔にはそれが真実であるというなによりの証拠に思えた。

 星野陽子。それがあの女の名前だった。マンションの郵便受けに入っているDMから名前を調べたのだ。
 この3週間というもの、大輔は大学をほっぽりだして陽子をつけ回した。しかし、尾行は難しいことではなかった。陽子は、ほとんど毎日学校と赤羽のマンションを規則的に往復しているだけだったからだ。
 恋人らしい男性の陰もなく、ときどき寄り道をするといえば、書店くらいのものだった。第2第4土曜日以外に、第1と第3木曜が休みだということがわかった。おそらく研究日にあたっているのだろう。

 しかし調べはじめてみると、天神で出会った女が陽子であるという自信が少しずつ揺らいできた。陽子は淫乱とは対極にある極めて品行方正な女といってよかった。
 しかし、大輔が尾行をあきらめようかと思いはじめていた今日になって、陽子がいつもと違う行動をとった。陽子は渋谷から銀座線に乗り込んだ。そして新橋で降りると山手線に乗り東京駅で降りた。そして、東海道山陽新幹線の改札口へと消えていったのだ。

 博多だ・・・

 大輔は狂喜乱舞した。そう、思い起こせば、大輔が陽子にはじめて会ったのも、第2金曜日の夜だった。それで、土日が休みのOLの男漁りと思ったのだ・・・。この時間なら「のぞみ」を使えば夜の8時には博多から天神に着くことができるはずだ。
 自分の目で確かめたかったが、大輔には金がなかった。しかし、天神に着けば、きっと悪友の店によるはずだ。悪友の携帯に電話し、陽子が店に現れたら連絡をしてくれるように頼んだ。


 8時半に大輔の携帯が鳴った。
「おい、おまえが言うた通り、あん女、来とーじぇ」
「そうか、服はどげんの着とー?」
「薄かベージュんスーツばい」
 この日の陽子のいでたちである。大輔は賭けに勝ったのだ。受話器を放りだして、飛び上がりたいような気分だった。
「頼みがあるっちゃけど」
「なんや、いうてみ」
「そん女が、男漁りに出たら、あとばつけてホテルに入るとこ写真に撮ってもらえんか」
「あほ、俺は店があるったいぞ」
「ムリば承知で頼むったい」
「そげん必死になるとこ見ると、訳ありやろ」
「まぁな」
 大輔は、セント・カトレア女学園の件を省いて、簡単に成り行きを説明した。
「へー、東京でなぁ・・・。わかった、おまえ、そげん写真撮って、そればネタに脅す気やな」
「まぁな」
「よっしゃ、大輔がそげん頼むなら、ダチで探偵しとー奴がおるけん、撮影頼んどいてやるわ。そんかわり、今度こっち来たとき埋め合わしぇせれや」
「わかった。恩にきるじぇ」


 翌週になって、待ちわびていた写真が届いた。いっしょに映っている男は、なんと悪友本人だった。
「あのやろう、メガネに適わなかっただなんて言ってたくせに・・・」
 大輔は嫉妬にも似た感情が沸き上がるのを止めることができなかった。
 写真は、赤外線カメラを使ったとみえて白黒ではあったが、陽子と悪友が寄り添って天神の町を歩くところから、ホテルに消えていくところまでを克明に映していた。
「これなら、申し開きは不可能だな・・・」
 大輔はほくそ笑んだ。


「星野陽子先生、ですよね」
 赤羽の駅を降りての道すがら、大輔は陽子に声をかけた。
 7月に入ったばかりということもあって、6時台ではまだ周囲は明るい。陽子は、さほど警戒もしないで立ち止まった。
「エエ、そうですけど・・・」
「セント・カトレア女学園の・・・」
「はい、どちら様でしょうか?」
「あれー、お忘れですか? 先月、福岡の天神で一晩を共にしたじゃないですか」
 一瞬、陽子の表情が曇る。が、直ぐに平静に戻った。
「人違いじゃありませんか?」
 そう言うと、歩きだした。
「そんなことありませんよ。俺は、一度会った人は忘れないんです」
 大輔もあとを着いて歩く。
「もうやめていただけません。ヘンな言いがかりをつけると、警察を呼びますよ」
「へー、そんなことしていいんですかね。こっちには、証拠がちゃんとあるんですけど」
「そんなもんあるわけないでしょ」
「じゃぁ、これを見ていただけますか」
 大輔は写真のうちの1枚を取り出した。悪友と陽子が寄り添って歩いている写真だ。
「先週の金曜日、天神に行きましたよね。このバーテンといっしょに店がはねた後、ホテルに行ったでしょ」
 陽子の顔が蒼白になった。
「先生があくまでシラを切るのなら、この写真をセットで学校に送り付けてもいいんですよ。まぁ、立ち話もなんですから、先生のお部屋に行きましょうか」


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