4.月は自ら光らない-21
しかし次の日に井上に呼ばれ、荒々しく抱かれている。指と玩具と舌で何度も絶頂を味わされる愛撫には、徹のような愛しみは微塵もない。まさに嬲られているに等しい扱いなのに、頭が痺れて、霞の向こうに何もかもが、浅草で別れた時の徹の寂しそうな笑顔までもが消えていくと、あとはこの男にもたらされる逃れがたい快楽だけが紅美子の中で沸騰した。
時々身をかがめて、ピストンの度に揺れるバストの先端で固くなった乳首を甘噛みされると、更に男茎を搾ってしまう。紅美子の淫らな狭窄に応えるように、体に垂らす汗滴が組み敷かれた体に飛んでくるほど、井上は何度も強い打突を最奥まで送り込んでくる。胸乳からバスト、そして脇腹に移った唇が強く紅美子の肌を強く吸引した。
「わっ……! だめっ!!」
淫楽に朦朧となっていたから、井上が唇を離した時にはもうキスマークが付けられていた。
「……そんな徹くんのキスマークだらけで来るからだ……!」
「んんっ! ……あ、会ったばかりだもんっ、当たり前……っくっ、ぁ……!!」
亀頭の先でグイッと最奥まで突かれて、圧迫されると声が出なくなるほどの快美に喉を詰まらせてしまう。まただ、と思った瞬間、呼吸が困難になる中で絶頂に追いやられていた。
(どうしよう……)
井上がいつも言う、徹への嫉妬が淫虐となって襲いかかってくる。それによってもたらされる淫楽が凄まじい。これだけ罪の意識に身を絞られているのに、井上が徹を引き合いに出し、紅美子に向かって婚約者ではなく自分の肉茎の方を求める言葉を吐くように強いてくると、紅美子は体の奥を打突する毎に声帯が弛んでしまった。
井上が紅美子の絶頂を見届けると男茎を引き抜き、ビクンとベッドの上で波打って脚の間に愛液を迸らせている紅美子の下肢を抱き寄せ、絶頂でまだヒクついている花弁へ指を埋め、クリトリスを啜ってくる。
「あぁっ……、うあっ……、あっ!」
井上の太ももを枕にして横臥し、片足の膝を曲げて開いた股間へ顔を埋められると、腰がキスと指を強く求めて淫猥に前後にくねってしまう。井上は紅美子の股間を貪りながら、もう一方の手で紅美子の頭を掴み、荒々しく自分の股間に引き寄せていった。頬に灼熱の肉柱が擦れる。薄目を開けると顔前に紅美子が漏らした蜜に濡れ塗れて屹立していた。クリトリスを舌で弾かれて合図を送られる。紅美子は甘い溜息を漏らして飲み込みそうなほど井上の男茎を頬張っていった。
(もう……、どうしよう……)
また自分はここにいる。何度徹に愛してもらっても、まだここに来てしまっている。徹には避妊具を使わせているのに、生身で挿れられていたばかりのこっちの男茎をしゃぶってしまっている……。
きっと、破滅はとっくに始まっている――。
そう思うのに、紅美子は井上の傘に舌を這わせていた。