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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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5.つきやあらぬ-1

5.つきやあらぬ


「光本さんっていい人だね。俺達のためにここまでしてくれるなんて」
「明らかに失うモノのほうが多いよ」
 ラブホテルのドアをくぐってすぐ、バッグからシガレットケースを取り出して一本吸おうとしているのに正面から徹が腰を引き寄せてきた。「ごめん、一本吸わせて」
「だめ」
 唇に挟んでいたタバコを徹にひょいと取られる。こんなことをされたことは今までになかった。
「えーっ、ちょっと吸わせてよ。光本さんにイジられまくったから気分落ち着けたい」
「だめ。待てないよ」
 近くに二人きりになれるところがなかったので錦糸町まで移動した。ついさっきまで二人で紗友美に会っていた。
「笹倉、徹です。クミちゃんがいつもお世話になってます」
 紗友美に向かって徹が頭を下げた。開口一番、聞いてたとおり本当に小っちゃいんですね、とか言わないか心配していたが、さすがの徹も結婚に向けて諸々を進んでやってくれている紗友美に、いきなりそんな言葉をかけるほど変わり者ではなかった。
「はい、お世話してます」
 スカイツリー駅近くのファミリーレストランで待ち合わせをした。先に来ていた紗友美は、連れて現れた時から、徹のことを興味丸出しで目を輝かせていた。紅美子は紗友美が徹に何を言い出すか、徹が紗友美に何を言ってしまうか気が気でない。
「ところで」
 ボックス席の対面に座った紗友美が、徹に向けていた表情のまま、「クミちゃん?」
 と紅美子の方を見た。
「……なに?」
「生でクミちゃん、なんて可愛らしい呼ばれ方されてるとこが見れて光栄です」
 やがて始まる紗友美の詮索を覚悟して、紅美子はバッグからシガレットケースを取り出そうとしたが、禁煙席だというのを思い出した。仕方なく水を飲み、
「そんなこと敢えて言ってくれなくていい」
 紗友美から目を逸らした。紗友美はふきだすのを抑える手真似で口元を抑えた。目だけ覗く顔がニヤけている。
「いつからそう呼んでるんですか?」
 そのニヤけ顔のまま徹のほうへ前のめりになって紗友美が訊くと、
「……いや、……」
 徹はチラリと紅美子を見た。余計なこと言うなオーラ全開の紅美子を見て、「子供の時に出会って話すようになったら、いつの間にか」
「付き合ってからもですか?」
「一度、クミちゃんはやめて、って言われたんだけど、呼び慣れちゃったんでなかなか。……あ、でも……」
 紅美子は徹の言葉に驚愕して猛烈に焦った。何を言い出そうとしているんだろう。徹は紅美子とセックスをするときだけは、必ず名前で呼び捨てをしてくれるようになった。徹に肌を擦りあわせている時はいつでも、体じゅうを撫でられ、吸われ、そして彼の一部を体に埋められている最中に名前を呼び捨てにされると、気が急くほど体に愉楽が広がって彼が愛しくて仕方なくなった。バカップルだ。だが、それを? 今、ここで?
「マ、ママが、クミ、って呼ぶから感染っちゃったんだよねっ?」
 紅美子は発話直前にの徹に割りこんだ。
「なるほど。……で、『あ、でも』、何ですか?」
 紗友美は決して聞き逃してはいなかった。
「別に、何でもないよね?」
 紅美子は徹の方を見つめ、言葉を繋がせまいと押しを強くする。
「……結婚したら、呼び方変えようかなって思ってるんだ。最初は不自然かもしれないけど。色んな人にも夫婦で会うだろうし、その方がいいかなと思って」
 徹は紗友美ではなく紅美子の方を見て、真面目な面持ちで言った。
「……」
 案外普通のことを言ってくれたことに胸を撫で下ろして息をつき、「そうね。そうしたら?」
「……女王陛下、とかどうです?」
 紗友美が茶々を入れる。
「こら。……てかこの話、結婚に関係なくない?」
 眉を寄せて紗友美を睨むと、
「陛下がお困りなので、話を変えましょう」
 紗友美は笑ってノートとボールペンを取り出した。
 二人の結婚を最高のものにするために聞き取り調査をします。それが紗友美が徹と会うための口実だった。電話で話しているとき、紗友美にウェディング・プランナーとか向いているんじゃないかと言ったら、紗友美自身もそう考えていたようで、「長谷さんの式をやり遂げたら、マジメに考えてみようと思います」と言った。そう言われていては恥ずかしいからという理由で無碍に断るわけにもいかなかった。
「……えっと、二人が出会ったのは五歳のときですよね?」
「それは前に言ったでしょ?」


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