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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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1.違う空を見ている-20

「レイプされたのに、……赤ちゃん、できたの。……、でもね、……なのにね産んじゃって……。病院で、病院でね……」
「……ママ、お願い、やめて」
「クミがお腹の中にいる、っていうのを実感しちゃったら……、絶対産みたいって思ったの。私一人でも育てていくって、思ったのにぃ……」
 紅美子は耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。歯が鳴って小刻みに震えていると徹が駆け寄って抱きしめる。
「クミちゃん……、クミちゃん……」
 名前を呼びかけながら腕や背中をさすったが、紅美子の震えは止まらなかった。
 ……あの時初めて徹に抱きしめられたのか。


 一人でテレビを見ていたら、チャイムが鳴った。ドアを開けると、神妙な面持ちの徹が立っていた。
「あれ、徹。まだ帰ってないの?」
 学生服姿のままだった。紅美子の言葉に何か考えこんでいるようで言葉がない。「入る?」
 部屋の中に導き入れても徹は暫く言葉を発しなかった。
 中学にもなるといくら幼馴染とはいえ夜に二人きりになることで「間違い」があってはいけないと徹の母親は気を揉んでいたが、その相談を持ちかけられた紅美子の母親は全く気にしていなかった。徹の母親の目から見ると、すでに紅美子の体つきは大人びて、もともと整った顔立ちをしていたから、相手が徹でなくとも悪い虫が心配されるのに、紅美子の母親は相手が徹ならば是非と考えていた。
「ねー、なーに?」
「うん……」
「私、テレビ見てたんだけど?」
「……クミちゃん。今日、何してた?」
 その言葉にすでに紅美子はピンときた。
「別に。家に帰ってきて……」
「ウソだ。出かけたでしょ?」
「……あー、うん、出かけたよ。今言おうと思ってたんじゃん」
 すると徹はまた暫く考えこみ、顔を上げる。
「そのカッコで?」
「は?」
 柔軟体操にハマっていたせいもあって、無意識のうちに足の裏を合わせて指先を両手で持っていた紅美子は、自分の服装を見下ろした。Tシャツにホットパンツ。
「こんなので出てくわけないでしょ。……あー……、徹。今ちょっとエッチなこと考えたりしてる?」
 徹はカッと頬が赤くなった。マンガみたいだな、と思っていたら、
「僕はマジメな話をしてるんだ!」
 と強く言ったから、思わず紅美子は、あ、ごめんね、と言ってしまった。
「高校生の人に呼び出されたんでしょ?」
「そうだよ」
「……、……。告白されたんでしょ?」
「うん」
 また徹が黙る。どうしてそんなこと気になるの、と答えを知っている問いをしてみたかったが、やると徹が頭から煙を噴き出しかねないと思ったから止めた。
「結果が気になるんでしょ?」
「……うん」
 いつもの調子なら、OKしたって言ったらどうする?、とか天邪鬼に聞く。しかしやはり今の徹の様子は尋常ではなかったから、
「断ったよ」
 とだけ言った。すると本人は隠しているつもりだろうが、明らかにホッとした顔が見て取れたから紅美子は我慢できずに笑ってしまった。
「どうして笑うの?」
「だって」
「なんで?」
「……私って、誰かと付き合わなきゃならないのかな?」
 徹は勢いで紅美子の家に来たものの、そんな問いを向けられるとは思ってもみなかったから怯んだ。
「つ、付き合わなきゃいけない、ってことはないと思うよ」
「でも、何回も告白されるよ?」あぐらを戻して、膝を抱えるように座ると、「こんだけされたら、誰かと付き合わなきゃならないのかなー、って思っちゃう」
「……」
 また徹は黙った。紅美子はテレビを消した。外を走る原付の音が大きく聞こえてくる。紅美子はじっと徹を見ているのに、徹はずっと目を逸らして壁の一点を見つめて考え込んでいた。
「……ねぇ、言葉、決まったぁ?」
「え、なにそれ?」
「徹、私のこと、好きなんでしょ?」
「う、うん」
 ……だって、頭いいのに全然答え出さないし。即答しちゃったし。
「じゃ、言ってよ」


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