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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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1.違う空を見ている-21

「何て……?」
「もー! それを考えてたんじゃないの?」
 紅美子は四つん這いで徹の近くに進んでいって顔を覗きこんだ。紅美子に至近に見つめられて真っ赤になるのが笑えた。
「……クミちゃん」
「はいっ」
 紅美子はわざと正座をして背筋を伸ばし、両手を足の上に置いた。
「つ、つ……」
 徹は紅美子の方を向いて口をパクパクさせてから、大きく息を吸い込み、吐き出した。「……クミちゃんを恋人にしたい」
「……『つきあってください』じゃないんだ」と紅美子は笑って、「そんな風に言ったヤツいなかった」
「……」
 じっと徹が紅美子を見ている。
「……いいよ」
「いいの?」
「いいよ」
「ほんとに?」
「しつけー」
 紅美子は笑ってから、少し真剣な表情になった。「好きって言って?」
「す、好き」
「だめ。なんか違う」
「……クミちゃんがずっと好き……、です」
「ずっと? いつから?」
「会ったときから」
「……うえーん。付き合い始めて一分で彼氏に嘘つかれたー」
 紅美子が泣き真似をする。
「ウソじゃないよ」
「ウソ」
「ウソじゃない」
「ウソだ」
「クミちゃんのほうがしつこい」
 やっと二人で笑い合えた。
「クミちゃんは僕でいいの?」
「……徹ならいい」
「……」
 表情を曇らせた徹に紅美子が言った。
「……じゃ、男らしい彼氏として頑張って、『徹じゃなきゃやだ』って私に言わせてみて?」
 ……こんなこと言ったから、次の日みんなの前で宣言しちゃったのかな。


「おそーい」
 徹がアパートのドアを開けると、紅美子が声をかけた。
「ごめん……」
 靴を脱いで徹が入ってくるが、部屋に入った所で立ち尽くしているのを、紅美子は後ろ手を付いて膝を伸ばして座ったまま見上げた。
「買ってきた?」
「うん……」
「……なんで立ってんの?」
「……」
 徹は赤くなって、紅美子の視線を避けるように斜に身を向ける。
「こっち来て」
 紅美子は立ち上がり、隣の部屋の襖を開けた。普段母親と寝ている部屋には紅美子の布団だけが出されて敷かれていた。「……閉めて」
 寝室に入ってきた徹は、やはり入った所で立ち尽くしていたが、やがて紅美子に言われたとおりに襖を閉めた。
「なんでそんな遠くにいんの?」布団の上に立ち、首を少し傾げて腕組みをした紅美子は徹を呼んだ。「はやく」
 徹がおずおずと布団に乗って紅美子の前に立つと、
「貸して」
 と手を出して、徹が持っていたビニール袋を受け取り中を覗き見る。「あ、カーテン、閉めて」
「う、うん……」
 徹がカーテンを閉めている間に、ビニール袋から箱を取り出してセロハンを剥がした。箱の開ける前にビニール袋の方を眺める。
「コンビニにもあるって言ったのに。……でも全然知らないドラッグストア。こんなのこの辺にあったっけ?」
「うん。……三ノ輪に」
「そんな所まで行ったの!? ……遅いはずだ」


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