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惚れ薬
【その他 官能小説】

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法悦曼荼羅華-2

 安田は朝から飲んでいたようで、一方的に喋ってよく笑った。奈々枝も少し口にしたらしくほんのりと頬が染まっている。特に目元がうっすらと紅く滲んだ具合など惹きつける色気がある。
 沙織。相変わらず可愛い。お年玉を奮発したものだからとても愛想がいい。愛らしい唇、白い耳たぶ、うなじ…。すべて俺が口をつけたところだ。貫いた秘口はどうなっているだろう。彼女は何か変化を感じているのだろうか。
(憶えてはいないんだろうな…)
その時の感激が甦ってきて、俺は裸の記憶を彼女に投影して昂奮を抱きしめた。

 「さあ、飲んでくださいね」
奈々枝は滴りそうな色香を湛えて微笑む。セーターに包まれた体からは脂の乗った肉体が浮き上がっている。
(たまらない…一段とそそる…)
酒の肴はその体で十分であった。
 俺は安田の話を聞き流しながら、動くたびに揺れる乳房の膨らみや尻を盗み見ては愉しんでいた。

 夕方になって状況が変わった。沙織が友達の家に泊まりにいくという。
「明日の朝、初詣に行くんだとさ。ご苦労なことだよな」
安田はビールを飲みながらへらへらと笑った。呂律がおかしくなってきていた。
「沙織ちゃん、初詣はどこに行くの?」
「湯島天神」
「そうか、受験だもんね」
外泊は前から決まっていたようだ。
(がっかりだな…)
だが、
(待てよ…)
沙織が出かける物音を聞きながら、
(邪魔がいなくなった…)
ということでもある。奈々枝に標的を絞ればそういうことだ。チャンスではないか。
 奈々枝でもいい。いや、今はたぷたぷの奈々枝がいい。

 奈々枝の後姿を見ながら俺は安田に酒を注いだ。酒好きだが強い方ではない。可能か不可能か、成り行き任せだ。
「磯貝、飲んでるか?」
「いただいてますよ」
「もっと飲まなきゃだめだぞ。正月だからな。今日は飲み明かすぞ」
もはや酩酊状態である。酔いつぶれるのは時間の問題に見えたが、さらにおだてあげてピッチを速めた。
 一時間もしないうちに安田は完全にのびた。布団に運んだのは俺だが、誰に何をされているのかまったくわからない状態であった。
 社員旅行で何度か潰したことがある。旅行の宴会でなんやかやと説教じみたことをしつこくのたまう輩がいるものだが、安田はその典型で、若手社員はまっ先に酔いつぶしにかかるのだ。

 「ほんとにご迷惑をかけてすみません」
居間に戻ると奈々枝は料理を並べ直して、グラスをいったん下げて新しいものと取り換えた。何だかいそいそと動きが溌剌に見えた。
「改めてゆっくり飲んでください」
顎の辺りのたるみが、絶頂時に揺れた肉付きを思い起こさせる。
「乾杯しましょう。主人がいると何だかうるさくて。落ち着いて飲むなんてできないのよ。ちょうどいい機会。磯貝さん、付き合って」
俺は恐縮を表しながら、
「でも、そろそろ失礼しようかと…」
「何言ってるの。主人も泊っていくように言ってたでしょう。あたしを一人にするつもりなの?」
ちょっと拗ねたような目を見せた。
「いや、そんな。…でも、係長、大丈夫かな」
「平気、平気」
「また起きてきて飲み直したりして」
「絶対にないわ。ああなったら朝まで起きない。絶対に」
妙に力を込めて言い、奈々枝の笑顔が消えた。俺を見据えると一気にグラスを空けた。
「だから、ね…心配いらないわ」
その表情に硬さを感じたのは気のせいか。
「そうだわ。磯貝さん。お風呂、入ってきなさいよ」
言い方に微妙な澱みがある。急に思いついた抑揚感がなかった。
「いえ、そこまでは」
「いえいえ、さっぱりしてから。ゆっくりしましょう。新年ですもの。そして泊っていって」
早口で言うと俺の言葉を遮って立ち上がった。


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