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未定第二部
推理リレー小説 - その他

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未定第二部 10

「ボスのところ?」
俺は銀髪の女に反問した。
「そう、あなた達のよく知る男、ミスター千葉のところへね…」
銀髪の女、茜は視線すら向けず応じる。
「まあ、逃げようとは思わない事ね。秒速425メートルで動けるのなら話は別だけど…」
スーパーマンじゃあるまいし、そんなこと出来るわけがない。俺は笑えない冗談に押し黙り、汗くさい男達に引き連れられて歩いた。茜の銃は、抜き打ちに不便な撃鉄はあげてあり、セーフティーで固定されている。つまり、常に臨戦態勢というわけだ…。
歩きながら周囲に目を配ると、偽装とは言え、船内には一般客もかなり乗船しており、騒ぎを聞きつけて俺達を遠巻きに見守っている。
その雑踏の中、聞き覚えのある黄色い声が俺の耳に届いた。
「あら、土下座右衛門じゃない!?」
声の主は桜子であった。その横には公主と執事の姿もあった。どうやらたまたまこの船に一般客として乗り合わせたらしい。こうなると公主に助けてもらえるかも知れないが、仲間であると分かっては桜子達もつかまるかも知れない。そこで俺は桜子を無視してその場を立ち去った。横目でみると桜子は首をかしげている。
「うふふふ、ようこそ、ブルジョワの薄汚い飼い犬共よ。君達も私の配下相手に健闘したようだが、所詮志の低い愚民、我が精鋭の前には哀れに膝を屈するしか無かったようだな…」
俺達が連れ込まれた場所は船倉の更に下にある牢獄だった。そして目の前に現れた男こそ、元桐山の第三秘書室長、共産帝國による世界制覇を目論む危険な男、千葉茂雄。通称“赤い眼鏡”。
「しかし、案ずることはないぞ。私は君達のようなハイエナにも寛容である心を持っている。君達にも生き残るチャンスをあげようではないか」
千葉はそう言って喉の奥を鳴らしてくつくつと嗤った。
「この船はカジノ船でもあってね、その目玉というのが異種格闘技戦による勝ち抜きのトーナメントなんだよ。そこで、君達にはそのトーナメントに出場してもらうことにする。最後まで勝ち抜いて、生き残ることが出来れば、勝利者としての栄誉と共に自由を与えることを約束しよう」
千葉は愉快そうに再び嗤うと、気取った様子で指を鳴らす。すると、それを合図にして屈強男達が俺達に金属の首輪をはめていった。
「なんだ、この首輪は?」
俺が質すと、千葉は勿体付け、落ちかけていた眼鏡を人差し指で押さえ、小さく咳払いをしてから質問に応じた。
「保険だよ、保険。私は危険な狂犬を、首輪も付けないで放し飼いにする気はないのでね…」
「保険?ちっちっ、こんな首輪一つで俺を縛ることは出来ないぜ」
ニヒルを気取って人差し指を左右に振る健。しかし…。
「その首輪は爆弾になっている。もし逃げようなどと考えると、その場で肩が軽くなることになるぞ」
茜と呼ばれる銀髪の女が、さも面白くなさそうに注意すると、健のこめかみに冷や汗が一滴したたり落ち、天を向いていた人差し指もしおれてお辞儀をする。
にしても、千葉の野郎はとんでもねぇ悪趣味野郎だ。
「で、その大会のルールとかは?」
呑気な顔で訊ねる今泉。それに対し、千葉の野郎は陰険な笑みを絶やさず、その質問に応じる。
「飛び道具以外の身に付けられる武器は使用可。重くなければ鎧を着たってかまわないさ。先程も言ったが私は寛容でね、お前達が望むならどんな武器でも貸し与えてやるよ」
ちっ!こんな首輪を付けやがって、寛容が聞いて呆れるぜ。

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