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未定第二部
推理リレー小説 - その他

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未定第二部 22

おのれ、言いたい放題訳の分からん事言いやがって…。
俺は怒りのあまり血管がぶち切れそうになっていたが、あまりに間抜けな罠にかかってしまった後ろめたさもあり、何とも言い返すことが出来なかった。
「さて、お前達低脳の愚民ごときにいつまでもかまっている場合ではないな。残念ながらこの船はお前達にくれてやる。この船を爆破した後、私は潜水艇で脱出し捲土重来を図ることにしよう。明晰で優れた灰色の頭脳を持ったこの私が存在している限り、我が野望は永遠に潰えることはないのだ。まあ、その穴蔵も海の底も、暗いという意味に於いてはさして変わりあるまい。3人仲良く、自己批判でも繰り返しながらあの世へと旅立つのだな。それではさらばだっ!」
言いたいことを言うだけ言うと、やがて千葉はその場を立ち去った。
その頃には俺達の怒りも既に何処へやらと失せ、俺は深い溜息をこぼした。そして傍らの健も同様で演技でもないことをぽつりと呟く。
「長いようで、短い人生だったな…」
しかし、お銀は何処かお気楽で、意気消沈している健を窘める。
「さっきも言ったけど、少なくともあんたが死ぬわけないじゃない。そして、あんたみたいのが助かるなら、勿論私達も助かるのよ」
何だかよく分からない根拠だが、少なくとも俺は納得した。それに今泉なり六錠さんが来てくれれば、ここから抜け出すことは出来るだろう。あとはこの船の爆破前になんとか脱出できればいいのだが。
その時、不意に頭上から声が聞こえた。
「ま〜〜ったく、土下座右衛門ッたら、どうしてこう使えないのかしら?」
少女の声。聞き覚えのある…。
「桜子かっ!?」
俺を土下座右衛門と呼ぶ少女の声は紛れもなく桜子の声であった。作者はオールキャストで早く出したかったらしいが、俺は試合だのなんだのと色々あって、この船で最初に会っていたことすら覚えていなかった。
「お前、なんだってこんな船に乗っているんだ?第一、こんな所にまでのこのこやって来たら危ないだろうがっ!!」
「伯母様が世の中の表裏を見ておいた方が良いって、連れてきてくれたのよ。六錠さんの仕事もあったしね。なにより寄宿学校でカボチャを眺めているよりこちらの方がよほど面白いもの」
「そうか、公主も来ていたんだったな…。まあ、何でもいい。桜子、俺達をここから出してくれないか?」
「船倉からロープを持ってきたわ。今からロープを下ろすけど、私が助けて上げた事は一生感謝するように。と言っても、あなた達に恩を売ったところで、何ら将来への投資にはならないでしょうけどね」
くそ。上にあがったら一発ぶん殴ってやる…。
「さあ、カンダタ達、お釈迦様が助けてあげるわ」
桜子は嬉しそうにそう言うと、ロープの端を穴に投げ込んだ。
「まあ、これで少なくともここに閉じ込められたまま海にに鎮められると言うことはなくなったな」
俺はロープの端を握るとそう言った。
「そんなことより早く上にあがろうぜ」
「あなた達が先に行ってよ。上を覗かれたらたまらないもの」
お銀の言葉に俺と健は苦笑したが、今はかまっていられないので俺が先にあがることにした。
なんとか穴から這い上がると、健が出てくるのを待ち、二人でお銀を引き上げる。
「ん、なんだ?公主はどうした」
周囲を見回して、桜子独りでいることに俺は首を傾げる。
「伯母様は千葉の後を追ったわ。執事のポールは最初から別行動で脱出艇を使えないようにしている筈よ」
「と、なると、千葉はこの船から逃れられないと言うことか…。しかし、奴はこの船を爆破するようなことを言っていたからな、何とかしないと…」
どうにもならない状況に俺は呻いた。船を逃げ出そうにも手だてがない。爆破を食い止めようにも、何処に爆弾が仕掛けられているか分からない…。
「せめて、千葉を掴まえられれば、爆破を止める方法を聞き出せるんだが…」
俺の言葉に、お銀がかぶりを振る。
「あの男がそう簡単に口を割るわけないじゃない…」
「しかしよ」健が口を挟む。「しかしよ、やっこさんは自分だけ助かるつもりだったんだろ?もし逃げられないと分かったら、爆破を止める方法を教えるんじゃないか?」
「そう、上手くいくといいんだけど…」
「ともあれ、公主の後を追おう。千葉を見つけないことにはどうにもならん…」

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