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未定第二部
推理リレー小説 - その他

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未定第二部 23

しかし、わざわざ俺達が出向くまでもなく、俺の言葉に呼応するかのように千葉の耳障りでヒステリックな声が響き渡った。
「見つけるも何も、私の方から出向いてやったぞっ!!おのれ何処までも小賢しいゴキブリ共めっ!!よくもこの私の偉大な計画を邪魔してくれたなっ!その上脱出艇までも使えなくしてくれるとはっ!もう勘弁ならんぞっ!!!」
怒声に続いて地響きがすると、次の瞬間、壁をぶち破って神の玉座、業戦車メルカバが姿を現した。
「うげぇっ!あの野郎、戦車まで持ち出しやがって!」
魂消た声を出すイエローボーイ。
「兵器庫にあった物の中に使える物があったのか!?」
「密集していては駄目よっ!皆、離れてっ!」
お銀の言葉に俺は桜子を小脇に抱えてその場飛び離れた。
健やお銀も四方に散る。
「ふふん、無駄なことをっ!どうせこの船はすぐにも沈むのだ。同じ事なら私に殺されるが良かろうっ!!」
男のヒステリーはいかんともしがたい…。
逆上した千葉は主砲を鳴らして船を破壊すると共に、俺達を狙ってメルカバの爪と言われる二挺の機銃を振り回す。
「うひゃぁあっ!こいつは近付けね〜」
戦車から逃げ惑いながら、健が悲鳴を上げる。戦車はのろのろと床を耕しながら進んでいるが、少しでも千葉の目に止まろうものならめったやたらと弾が飛び出す。
「やれやれ、こいつは処置無しだな…」
俺は何ともしようがなく、肩をすくめた。
そこへ、執事を連れた公主が姿を現す。
「あなた方の仕事はいつもこんなに派手なのかしら?」
公主の何処かで聞いたような台詞に俺は苦笑いする。
ふと見ると、お銀の顔が強張っているのが見えた。何処までも恐いもの知らずなお銀だが、何故だか公主だけは苦手らしい。
「諦めないで、何とかしてくれないかしら?土下座右衛門はそれが仕事でしょ?」
傍観するしかない俺に桜子が発破をかける。しかし、なぁ…。
「とにかく、この戦車が何処まで来るかは分からないが、何とかかわして上へ戻ろう…」
少なくとも戦車から逃れられれば何とかなると思ったのだが、その提案にお銀が食ってかかる。
「上へって、何処へ逃げても同じでしょう。この船は爆破されるんだから…。それとも甲板から海に飛び込む気?この高さから堕ちたら海面はコンクリート並みよ。それに、こんな海の真ん中でボートも無しに漂流できるわけ無いじゃない」
しかし、その時、“ちゅど〜〜ん”というオノマトペと共に爆発が起こり、噴煙と共に碧が姿を現した。
「うげ、やば…」
戦車を暴れさせる千葉に、その上今泉に匹敵する人間兵器碧まで現れ、健が息を呑んだ。
しかし、その後ろから今泉兄弟も姿を現し、舞台を移して大立ち回りが再び始まった。
そこへ、錯乱した千葉が加わるのだから事態は収拾がつかない状態になってきた。
「公主、此処におられましたか…」
現れたのは今泉一族だけはなかった。六錠も姿を現したのだが、その背後に二人のマッチョの姿を認め、俺はぎょっとした。
「阿鈍に寒村じゃないか。お前等生きていたのか…」
「我々はそう簡単にくたばりませんよ。今泉さんに教えていただいた真実の愛を成就するまでは…。そんなことより、早く此処から脱出しましょう。ヘリポートに桐山の救難ヘリが到着しています」
「ヘリ?どうやって連絡を取ったんだ?無線は使えないだろう?」
「葵さんがあらかじめ手配されていたようです」
「よし、なら脱出だ」
船が爆破される前に逃げ出さなければならない。するとそこへ、横目で俺達のやりとりを聞いていた葵が叫ぶ。
「私達が時間を稼ぎます、先輩達は速く逃げてっ!」
このまま俺達が此処にいたのでは葵達の足を引っ張ることになる。俺は桜子の手を引いてヘリポートを目指した。
しかし、瓦礫で埋まった通路の中央に女が一人立ち、俺達の行く手を阻んでいた。殺人銃を持った銀髪の女、茜である。
「いい加減にして欲しいもんだな。この船はもうすぐ爆破されるんだぜ。あんたも逃げなきゃやばいだろ?」
しかし、俺の言葉を茜は鼻で笑い飛ばした。
「ムカついたら殺る、私はそれで良いのよ…」
自嘲気味に笑う茜。目がマジだ…。

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