PiPi's World 投稿小説

未定第二部
推理リレー小説 - その他

の最初へ
 17
 19
の最後へ

未定第二部 19

ストックを付けても暴れるモーゼルを御するのは難しい。ばらまかれる弾の中をかいくぐり、葵は必死に防戦した。
そして一方で省吾も、碧が冷酷な表情で振り下ろす剣を懸命に受け流す。
「今泉の名を持つ者が、もう少しまともな人生を送ることは出来ないんですか!?」
鍔で競り合いながら、言葉を投げかける省吾。
「はん、桐山の秘書室がまともな仕事だとでも?それに、左道傍門の生き方なんて、宗家の省吾ちゃんには理解できないでしょうし…」
「勿論、理解などしようと思いませんよっ!!」
その言葉と共に碧の腹部を蹴り、距離を取る省吾。
しかし、兇眼を燃やす碧は哄笑を上げてまるで怯まない。
「あははははっ!?それでこそ省吾ちゃん。殺し甲斐があるってものだわっ!!」

閑話休題。

「ところでミスター。美しいレディー達が心配なのは分かるが、ここで事の成り行きを説明していても仕方がないんじゃないかね?」
バイクの傍らに立つ六錠が、葉巻の煙を大きく吐き出す。言葉とは裏腹に、まるで急いでいる様子がない。
「あ、ああ、千葉を追いかけるんだったな…」
俺はそう言ってセルを回すが、六錠は悠然と葉巻をふかしたままバイクに跨ろうとはしない。
「おい、六錠さん。何やってんだ?早く乗ってくれ…」
「うむ、この期に及んで何だがね…」
「はい?」
「男同士でタンデムするのは私の主義に反するんだよ」
俺は六錠の言葉に頭を抱えた。俺の回りにはどうしてこうもマイペースな奴が多いんだ!?
「何言うてんねんっ!!俺かて男同士でニケツなんかしたないわっ!!」
「う〜む、致し方あるまい…」
六錠はあくまで渋々だったが、俺はかまわずにバイクを加速発進させた。
しかし、葵御謹製ゼロヨン8秒のモンスターマシンは伊達ではなく、俺は風圧に顔を歪めながら悲鳴を上げる。
「うをぉおおお、なんじゃこりゃあっ!!!!」
葵のバイクはとにもかくにもじゃじゃ馬であった。
ともすれば浮き上がる前輪を何とか押さえ込み、車体を無理矢理ねじ伏せて走る。
しかし、曲がれない、止まれない…。千葉の配下がなんとか俺達を制止しようとするが、迫る重バイクにとても手が出せない状況だ。
とは言え、狭い船内でいつまでもでかいバイクを乗り回せるわけもなく、途中で俺達はバイクを降りた。
こんな絶叫マシンに乗る葵の気が知れない。まあ、葵に言わせれば、俺はマシンを押さえ込もうとするからいけないんだとか。頷ける話ではあるがもう二度とこのバイクには乗るまい。
俺はそう心に誓うと、六錠は顔色一つ変えずに懐から出した葉巻の先をカットしている。
「私が調べたところ、千葉は恐らくこの船の最下層にいる筈だ。そこには脱出艇が備え付けられているので、恐らくそれで逃げ出すつもりだろう」
バイクを降り、やれやれといった様子で六錠は葉巻に火をつける。
「六錠さん、一服している余裕は無いみたいだぜ…」
俺は通路からわらわらと湧いて出る千葉の配下を見て溜息をついた。いくら俺でもこれだけの人数を相手にするのは骨が折れる。
しかし、六錠は余裕たっぷりに、敵を一瞥しただけで優雅に煙を燻らせる。
「やれやれだな…」
六錠はそう言うと、懐から取り出した携帯用の灰皿に吸いかけの葉巻を押し付けた。
うむ、タバコのポイ捨てはいけないことだし、恰好良くなんかはないのだ。
「ミスターはあれだけの銃を相手にしたことはあるかい?」
六錠に問われ、俺はかぶりを振る。
「俺はリスクは極力避ける主義だ…」
「うむ、プロの答えだ。とは言え、この場合はどうにもならんので、まず私が先陣を切らせてもらうよ…」
そう言うと六錠は黒の革手袋を手にはめ、横並びに銃を構える千葉の配下達に向かって駆け出した。
相手もプロ。躊躇無く引き金は引かれ、六錠のジャケットは蜂の巣になる。
そう、ジャケットだけ…。
六錠はまるで変わり身のように姿を消し、宙を飛んだ。
勇躍、敵のただ中に躍り込むと、まず手近にいた敵の頬を鋭いパンチで貫く。
至近距離から打ち出された拳は敵の顎と鼻を粉々に粉砕し、相手の男は地面に打ち付けられ、痛みに絶叫をあげる。
肺の奥から瘴気を吐き出し、ぞわぞわと総毛立たせる六錠。そのあまりの壮絶さに誰もが言葉を失ったが、やがて誰かが辛うじて声を上げた。
「こ、こいつ、ろ、六錠だ…ッ!?」
六錠の姿に圧倒されていた敵だったが、その一声で弾かれたように我に返り、誰もが混乱し、恐慌状態に陥った。
「うわぁあっ!?た、助けてくれぇっ!!」
「六錠だっ!!討ち取って名を上げろ」
「ぎゃあ、やめろ、こっちへ来るなぁああっ!」

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す