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未定第二部
推理リレー小説 - その他

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未定第二部 18

怒りに燃えながらも隙のない動作で弾倉を替え、再び省吾を狙う茜を碧がたしなめる。
「茜、落ち着いて…省吾ちゃんは銃で倒せるような子じゃあないでしょう?」
「しかし姉様っ?」
「そ・れ・に」
ちょいちょい、と天井を示す碧。そこにはシャンデリアから蝙蝠のようにぶら下がる葵の姿があった。二挺の自動拳銃から、45口径が機銃の速さで放たれた。VIP席の窓が砕け散り、碧と茜は反射的にそこから飛び退く。
勿論、その程度で二人をやれる筈もないが、一瞬碧達の姿を逃し、葵は舌打ちした。
「…逃がした?」
兄の傍らに飛び降り、油断無く周囲を窺う葵。
「あら、どうして私達がオカマ相手に背を向けなくてはならないのかしら?」
刹那、視界の外から碧の姿が飛び込んできた。
葵は慌てて発砲するが、剣によって銃は弾かれ、手放さなかったものの弾道は大きく逸れる。
今泉は葵の懐に飛び込んだ碧に剣を向けようとするが、碧は既にその場から姿を消していた。
視界から消えた碧は剣を横薙ぎに振るうが、今泉はそれを辛うじて受け止めた。外から見ると今泉達が愚鈍に見えるかも知れないが、実際に碧の動きを視線で捉えるのは至難の技である。素早さもさることながら、碧は人間の虚を突くことに長けているのだ。
「お兄さま、避けてっ!」
兄弟の阿吽の呼吸を見せ、今泉が姿勢を下げたところへ葵が銃を撃ち込んだ。
いくら碧でもこの距離では避けるゆとりはないはず。葵は確信を込めて引き金を引いたが、しかし、碧は平然と手にした刀で弾丸を斬り払った。
「くすくす。こんな芸当、省吾ちゃんだけの専売特許じゃないのよ…」
紫雲の浮かんだ刃をぺろりと舐め、恍惚の表情を浮かべる碧。
今泉はその隙に間合いを取るが、碧はニヤニヤとしてそれを見守った。
「陽炎が…」省吾は言った。「陽炎が立ち上っている。その剣、ただの曲刀ではありませんね」
「抜けば水気ほとばしる氷の刃…、とまでは行かないけど、…ね」
「成る程、“炎”の通り名は伊達では無いというわけですか…」
油断無く剣を構える今泉を、碧は値踏みするような目で見つめる。
「そ、古代インドに伝わる神秘のウーツ鋼、或いはダマスカス鋼。超高炭素の炎の剣と、省吾ちゃんの御神刀…、どっちが強力かしらね」
次の瞬間、耳障りな音を立てて二振りの名刀が打ち合った。紫電が飛び散るも、互いに刃こぼれ一つしていない。
硬度、粘り強さ、そのどちらをとっても互角というわけである。
時折、自らにも迫る碧の曲剣をかわしながらも、どうにか省吾を援護しようとしていた葵だったが、そんな余裕もない様だ。音速で迫る殺意に振り向き様、応じる葵。鉛と鉛が弾け飛び鈍い金属の火花を散らす。
「私をお忘れでないかしら?」
その先にはアリーナ席で、モーゼルにライフルの様なストックと、20連弾倉を装着した茜の姿があった。
「葵っ!頼む!」
「はいっ!」
横っ跳びに二挺のガバメントを速射する葵、茜もそれを躱しつつ、モーゼルをフルオートに切り替え薙払う。
BGM:英雄本色(男達の挽歌)

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