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未定第二部
推理リレー小説 - その他

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未定第二部 17

そんなことを言っても聞き入れる相手でもないだろうに…。
ともあれ、首輪が使いものにならなくなったのは一安心だった。今頃は今泉配下の阿鈍と寒村も行動を起こしているだろうし、首輪で縛られていた格闘家達も反旗を翻している筈だ。
俺はほっと安堵の胸を撫で下ろしたが、次の瞬間、背後で何者かの気配がした。
「やれやれ、桐山の仕事というのはいつもこんなに派手なのかい?」
何時の間に現れたのか、俺は聞き慣れない男の声にはっとして身構えた。…いや、聞き覚えはあった。
「あ、あんた、六錠っ!?」
俺は、今となっては懐かしい、公主の一の配下、石塚運昇の声の持ち主六錠の姿を見て驚きの声を上げた。
「どうしたね、ミスター。公主にはあったんじゃなかったのかい?」
「い、いや、公主と桜子は見かけたが、あんたは一体…」
「ふむ、中東の油田の採掘権で桐山ともめてね…。その相手が君も知っている千葉なんだが、酷い横紙破りをされたものだからちょっとお灸をすえてやろうと乗り出してきたんだよ。しかし、まあ、健や銀鈴は相変わらずだな…」
六錠はそう言って葉巻を取り出すとカッターで端をカットして口にくわえた。そして、こちらを見もせず一本取りだし、俺に差し出す。
「やるかね?」
「いや、けっこう。俺は吸わないんだ」
「まあ、その方が健康には良いかな。それにしても、あそこでバイクに乗って大立ち回りをしているのは君の仲間だろ?君の回りは美人が多くて羨ましいね…」
そう言って、六錠は大きく煙を吐き出した。
「…喧嘩を売っているのか?」
「ん、何か気に障ったかね?」
「…あ、いや、すまない。別に…」
今泉兄弟がバイクから降り立ち、省吾が『使って下さい』とそいつを寄越した。
「じゃ、そーいう事で千葉の方は誠司くんと六錠さんにお任せして…と。」
相も変わらずマイペースな省吾、どこに隠し持っていたのか愛刀をひっさげている。葵もまた機関銃と放水機を放り出し、手品のように二挺のガバメント拳銃をメイド服の両袖から抜き放つ。
「すみません先輩…私達は…」
わかってるわかってる…みなまで言うな。
「茶番はこれまでよ!」
VIP席で怒りに燃える今泉茜。にこにこふわふわと狂気じみた微笑を崩さぬ碧。
『今泉兄弟』『今泉姉妹』…ヒトの持てる全てのカオスの集大成。
「とてもじゃあないが、僕達の入る余地はなさそうだねぇ?」
気怠そうに葉巻をふかす六錠だが、その手は僅かに身震いしている。俺もまた、滝のような冷汗で背中を濡らしていた。
そして四人の今泉、誰がともなく、凍り付いたような声で言い放つ。
「それでは『今泉』を始めさせて貰います。」

しかし、茜は今泉が言い終わるか終わらないかのうちに拳銃を抜きはなった。
「殺し合いするのに挨拶する莫迦が何処にいるっ!?」
そう言って引き金を絞る茜。銃口が火を吹き、弾丸が発射されるが、今泉はそれを裂帛の気合いと共に斬り落とした。
居合いの達人はその動きを喩え八千分の一秒のシャッタースピードでも捉えることはできないと言う。ましてや…。
「ましてや今泉に生を受けた者なら尚のこと…」
呆気にとられる茜に向かって、今泉はそう呟いた。しかし、すぐに我を取り戻した茜は更に弾丸を撃ち込んだ。
「ふん、たかが日本刀。弾丸の五、六発も受ければ砕けるわっ!」
わずかに焦りの色を浮かべる茜。今しかし、泉は顔色一つ変えずに、ことごとく弾丸を切り捨てていく。
「もし、弾丸が刀の根本にでも当たれば折れるでしょうね。しかし、日本刀の反りは伊達についているわけではないんですよ。それに、ましてやこの刀は隕鉄を鍛えた磁鋼の剣…」

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