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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 5

「何かにしがみついていろっ!!」
次の瞬間、俺はウィリーターンを見せて敵に突っ込んだ。車でウィリーをする為にはとてつもないトルクとマシンパワーが必要だが、俺の愛車は並の車ではない。銃を構えて不安定な姿勢の追跡者達は虚をつかれてひっくり返った。
女はやっとこさ(まあ無理もないが)装填を終えたようだ。短銃身の.357マグナムを連射する派手な銃声と、アスファルトを削る跳弾が、追跡者の恐怖心にトドメを刺した。ひとまず追ってくる影はない。どうにか今回も死人を出さずに仕事ができそうだ。
「今度こそアスファルトに脳味噌ぶちまけて…ブツブツ…。」
こいつの射撃の腕があるかぎり、どうにか今回も死人を出さずに仕事ができそうだ。
ともあれ、危機を脱した俺達は、荷物を運ぶ為に空港に向かった。その車中で、女が聞きもしないのに、荷物の説明を始めた。「この娘は鍵なのよ」「鍵?」俺はミラー越しに怪訝な目を向けた。「そう、鍵。とある財閥の当主が不慮の事故で亡くなったの。その遺言は彼の死と共に、自動的にコンピューターが配信する筈だったの。でも、そうはならなかった…」
「彼が亡くなる直前に、たまたま落雷があって、データを守る為の自動遮断機能が作動した訳。」
女はシリンダーから空薬莢をはじき出し、太股にくくりつけた使いづらそうなガンベルトから予備弾を補充している。
「それで最低でもコンピューターの立ち上げ自体に、本人か身内の網膜と声紋チェックが必要なの。」
最悪ホトケさんの網膜と、盗聴か何かした声紋データを使うなど非人道的な方法もあっただろうが失敗したのかもしれない。少女のいる手前、あえて俺も彼女もそんな憶測は口には出さなかった…。
「ちょっと待てよ。その死んじまったお大尽は、身内が他にいないのかよ?」俺は女の太股を盗み見ながらそう質す。すると女はその視線に気が付き、撃鉄を引いて俺のこめかみに突き付けた。「コンピューターは立ち上がっても遺言は取り出せないわ。醜い遺産争いを避ける為の方策なんだもの。だから富豪はこの子の発する電磁波パターンや生体情報を鍵にしたの」

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