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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 36


「結局、フォンより殺されちまった桜子の爺さんの方が、一枚も二枚も上手だったってことなのかな…」
俺はバックミラーに映る銀鈴の太股を眺めながら呟いた。
「ちゃんと、前を向いて運転してくださるかしら?」
俺の視線に気が付いた銀鈴が、後ろからこめかみに銃を突きつける。
「どうでもいいけど、センターライン割っているんじゃない?」
と、窓の外を眺めていた桜子が、こちらを見もせずに呟く。
言われて前を見ると、トラックがクラクションを鳴らして迫っている。俺は慌ててハンドルを切り、事なきを得るが、中腰になっていたお銀がどすんと尻餅をついた。お銀はなにやら悪態をつくが、俺は気にせず、桜子の方に話しかけた。
「あれだけ大騒ぎして、遺産なんてこれっぽちも残っていなかったとはな…。遺産のほとんどは赤字を出している部門の補填に当てられて、残った分は全部寄付してしまったなんてな。フォンの蒼白な顔ったらなかったぜ…」
「一代であれだけの財を築いた人だもの、偏屈なだけでしょ」
桜子は相も変わらずそっぽを向いたままだが、俺は思わず苦笑いをこぼした。
そこへ、銀鈴が身を乗り出して訊ねる。
「それより、新しいエネルギー資源はどうなったのよ?その研究資料も処分してしまったわけ?」
銀鈴が口を尖らせるが、そんなことは俺にはどうでも良かった。おそらく桜子も御同様だろう…。
「お祖父様もあれに関しては快く思っていらっしゃらなかったようね。桐山に黙って、勝手に処分しておいても自分が死ねば、責任をとるものはいないものね」
「ふふ、お前の爺さんも相当な狸だな。」
「私のお祖父様だもの…」
「そりゃそうだな」
俺は思わず笑みをこぼし、やがて大きく破顔した。
「葵の奴もかなり困った顔をしていたからな。今頃桐山じゃ、大騒ぎじゃないか?」
「でも、省吾さんの方は笑っていたみたいだけど?」
「ははは、あいつはそう言う奴だからな」
「土下座右衛門君の、未来の奥さんだものね。それとも、旦那さん?」
「お、ま、え、なぁあああああっ!!!」


蒼天はどこまでも高く、青く、世はなべて事も無し。



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