PiPi's World 投稿小説

未定
推理リレー小説 - その他

の最初へ
 32
 34
の最後へ

未定 34

「…お兄さま、なんて事を!?」
省吾の信じられない言葉に、葵が驚いた声を上げた。
そこへ、葵を押しのけて銀鈴が前に出た。既に酔いの醒めている葵に対し、銀鈴の方はまだ状況が把握し切れていない様子で、目をしばたたかせながら俺の肩をぐいっと掴む。
「痛いっ?」
まどろんだ目で俺の鼻をつまむ銀鈴。
「あによ、あの優男は…。あんた、あんな末生り瓢箪にいいように言われてどうすんのよ…」
「あ、いや、どうすると言われても…」
「あんな奴、やっちゃいなさいよ」
「や、やるって何を…?」
「さっき渡した銃があったれしょ…。せっかくアーマー・ピアシング入れといれあげたんらかあ、どたまに一発、撃ち込んれやりなさいよ!」
なんちゅう物騒なことを言うんだ、この女は。
「うきゃぁああっ!!もう、まろろっこしいわねぇっ!わらしに貸しなさい〜いっ!!」
「うわ、暴れるな、莫迦ッ!?」
俺は取り合えず、手の空いている健に助けを求めた。「ホラお銀、拳銃渡せ、な?」パン…乾いた銃声…紅い液体…前のめりに倒れる健…「なんじゃ…こりゃぁ〜?」
「なんじゃこりゃぁあっ!?」
うずくまり、驚愕の声を上げるイエローボーイの健。真っ赤に染まった手をまじまじと見つめながら、呻き声を漏らす。
「俺ァ、まだ死にたくねぇよ…。しんこぉぉおおっ!!」
ゲシッ!!
次の瞬間、俺は健の頭を足蹴にしていた。
「しんこって誰やねんっ!!」
取り敢えず突っ込みを入れる俺。…う〜む、年がばれる。
「よく見てみろ、それはテーブルからこぼれたワインだ。膝をついたときにこぼしたんだろ。大体、何かあった時の為に一発目は空砲になっているんだ。血なんか出るはず無いだろ…」
言われて手をしゃぶり、匂いを嗅ぐ健。それが酒だと分かると、健は頭をかきながら照れた笑いをこぼした。
「…いやぁあ」
「いやぁあ、じゃねぇっ!!」
まったく、この男を始末する為ならタングステンコアだって劣化ウランだって撃ち込んでやる。
もっとも、その前に、今泉の事をどうするか、だ。
いくら居合いの達人の奴だって、此処にいる全員と一戦交えるようなことはしないだろう。
「此処にいる全員の口封じをしようなんてのは、いくらお前だって骨が折れるんじゃないか?」
俺がそう言うと、今泉は爽やかな微笑みと共に、手にした日本刀を前にかざした。
「確かに、いくら僕でも此処にいる全員を相手に出来るとは思っていませんよ。でも、例えばですよ、この機密性の高い地下室に、神経ガスを送り込んだとしたら…。皆さんに防ぐ手だてはありませんよね。まあ、たとえばの話ですが…」
俺は省吾の言葉にキレそうになりながらも、省吾がそんなことを言うなんてどうにも信じられなかった。
「もし、本気でそんなことを言っているなら、俺はお前を蹴っ飛ばす」
俺はそう言って省吾の顔を睨み付けた。
省吾は俺の真剣な表情に、笑みを浮かべた唇の端を下げ、真顔で応じる。
「勿論、冗談です」
「……はぁあっ??」
思わず脱力する俺を見て、省吾は無邪気に微笑み、Vサインを作る。
「今のはあくまで田宮秘書室長代理としての言葉です。僕個人は鳳家のお家騒動なんてどうでもいいと思っているんですよ。それに誠司君は僕をお嫁さんにしてくれると、約束をしてくれた人ですからね。そんな人を殺すなんてとても出来ませんよ」
省吾は突然とんでもないことを平然と言ってのけ、回りの空気が途端にざわめき立つ。
「ほ、本当のことなんですかっ!!」
目を吊り上げて悲鳴を上げる葵。
「いや、それは昔のことで…。小学校の頃は、こいつ女の子の格好をしていたし、俺は完全にこいつのことを女だと思い込んで…。ほら、並みの女の子より美少女だったし、つい…」
「へえ、土下座右衛門君、そう言う趣味があったんだ…」

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す