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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 35

「ふざけるなっ!!お前ら、俺を莫迦にしているのかぁっ!!」
完全に話から置いていかれていたフォンが、突然激高する。その言葉を聞いて、関西人の俺は莫迦にしていないこともないと、思わず呆けようかと思ったが、さすがにこの場でこれ以上フォンを茶化すことは出来なかった。
そこへ梁警部が歩を進め、フォンの前に立つ。
「まあ、莫迦にしているかはどうかはともかくとして、此処にお前さんの味方は一人もいないんだ、黙ってあの女の子が遺産をどうするのか見ていようじゃないか。破棄するもよし、自分のものにするもよし。それだけの人生をあの歳で生きていたんだから…」
梁警部の言葉と共に、その場にいた全員の視線が桜子に注がれる。
「私は別に、遺産が欲しいとも思わないし、父親の研究にも興味がなかった。ついでに言うと、寄宿学校で独りでいても、悲しいと思わなかったし、両親のいる子が羨ましいとも思わなかった。遺産を目当てに大人達が殺し合ったって、莫迦な大人のする事だから、私には関係ないと思っていた。別にそれは今でも変わらないわ…」
「そこの中産階級の辛酸を舐め尽くした運び屋のおじさん…」
不意に、桜子が俺の方に顔を向けた。
「あなたに私の気持ちが分かるかしら?」
突然の質問だったが、俺は迷うことなく答えた。
「いや、人の気持ちなんて、その本人にしか分からないだろ。いや、例え本人だって、本当には分かってないのかも知れないな…」
「そう、少しは頭が良いのね」
そう言うと、桜子は元の方向へと向き直り、巨大なハンドルの付いた地下金庫の扉へと向かった。
「これ見よがしに同情を見せる人は私嫌いだもの。土下座右衛門がそんな人間でなくて良かった」
一瞬振り返る桜子。
刹那、フォンが梁警部の制止を振り切り、しゃがみ込んでいる健の手から拳銃を奪い取った。
「お前なんかに遺産を独り占めさせる為に、肖星を殺したんじゃないぞっ!!」
錯乱したフォンはそう言って桜子に銃口を向け、引き金を引いた。
響きわたる銃声。
俺は無我夢中で走り出し、フォンの胸板に蹴りを撃ち込んだ。
「なにをやってるんじゃっ!どいつもこいつもっ!なにをぉぉおおっ!?」
拳銃というものは以外と当たらないもので(いつも健が抱えている旧式ライフルは所持品チェックで取り上げられていたらしい)大事にはいたらなかった。
「それにしても、この至近距離でよく外せるわね…」
お銀が自分のことを棚に上げて呆れた声を出す。
それに対して、床にめり込んだ弾をえぐり出しながら梁警部が応じる。
「まともにがく引きしたみたいだな…。ろくに訓練を積んでいない男が銃なんか満足に扱えるはずがないさ…」
「箸より重たいものは持ったことがないって顔をしていますものね…」とは葵。
そう言う意味ではお銀も葵も指を滑らせずに撃鉄を起こしたり、撃つときに銃を支えられるくらいの訓練は積んでいると言うことか…。(お銀に関しては多少疑問も残るが…)
そんな会話をよそに、桜子は気丈にも立ち上がり、そして、ついに生体錠を反応させた。
幾条も赤い光線が桜子の身体を走査し、電子音が鳴り響く。
そして、やがて重い扉が冷気の白煙を吐き出し、軋んだ音を立てて開いた。

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