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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 32

俺は腹を抱えて踞り、公主の顔を睨み付けた。「今更、争うつもりはないだと…」吐き捨てるように呟く俺の言葉に、六錠が公主に代わって応じる。「先に仕掛けてきたのはそちらではないのかな。全く、とんでもない男だよ…」六錠はそう言って鼻血を手鼻でちぎると、面白くもなさそうに折れた奥歯を吐き出した。とんでもないのはお互い様だろう…。俺はそう言いかけて言葉を飲み込んだ。そこへ、今まで事態を静観していたフォンが前へ進み出た。「姐姐、争う気がないのなら、どうして此処へ?遺言の開示は明日でしょう」「争いを煽っているのは、あなたでしょう…」フォンの問い掛けに、公主はやや眉根を寄せて応じた。「私は争いの元凶である研究資料や遺言を廃棄しに来たの。桜子を手に入れる間、ここまで事態が悪化したのは予想外だったけど、それもこれまでよ…」
「そんな横紙破りが許されると思っているのですか?一族の者達が果たしてどう言うか…。それに、研究資料は鳳家だけの問題ではないはずです。桐山の意向を無視して、あなたが独断で決めて良いことではない筈だ」フォンは飄然としてつかみ所のない男だったが、公主との会話にはやけに熱弁を振るっている。勿論、俺は遺言がどうのと言うことにはまるで興味がなく、桜子をのこのこと危険な場所に連れてきた公主の腹づもりが気に入らない。ともあれ、もう一発六錠に蹴りを入れる為には今しばらくの体力の回復と、この事態の正確な理解が必要だ。しばし流れる沈黙。俺が黙りを決め込んでいるのと同様、緊迫した空気の中、誰もが似たようなことを考えているに違いなかった。そこへ、誰も予想していなかった思わぬ男が姿を現した。公主の背後から悠然と姿を現したのは、日本刀を手にした優男、日本にいる筈の今泉祥吾であった。
「お兄さま、どうして此処へ!?」驚いた声を上げる葵。どうやら兄の出現で一気に酔いが醒めたようだ。「葵一人では少し心配だったもので、秘書室長には野外プレイと言うことで公衆トイレの中で縛られてもらっています」事も無げに告げる今泉。公衆トイレを開けた奴はさぞかし度肝を抜かれたことだろう。そこへ今まで口をつぐんでいた梁警部が口を開く。「何にせよ、これで遺産に関わる各立場の人間が揃った訳だな」そう言って、一同を見回す梁警部。「紅月ちゃんは争う気がないと言っていたが、相反する立場の人間がこうもいるんだ、ハイそうですかと素直に道をあけてくれるものでもあるまい?」公主に視線を移す梁警部。その言葉に、公主は静かに応じた。「その為にあなたが此処にいるのでしょう?」含みのある言葉を漏らす公主。そう言えば、困ったことがあれば梁警部に連絡しろろ言ったのは公主自身だった…。
「フォン・エドリックが親族の有力者達を煽って事を大袈裟にしたのは分かっていたからな。それと、…遺言が取り出せなくなった、と言うのもその男が仕組んだことだ。まともな方法では財産分与にはあずかれないからな。ついでに言うと、どうも祖父の死にも一枚噛んでいるようだな」淡々と言葉を紡ぐ梁刑事。フォンの無機質だった表情にも、わずかに狼狽の色が見える。「それで、僕を逮捕しようとでも言うのですか?確たる証拠も無しに」うわずった声で虚勢を張るフォン。しかし、梁警部はあくまで冷静だった。「いや、しかし、君がこの保管システムを管理すると言うことに関して、鳳グループのお歴々は快く思わなくなったようだ」「それが一体?」「つまり、この場での君は鳳家の代行者ではないと言うことだ…」
祥吾がいつもの毒気のない笑顔で淡々と語り始める。「遠くの親戚より近くの友人という表現をご存じですか?」歯噛みするフォンに構わず続ける。「気付いているはずです。条件さえ整えば親類でなくとも遺産相続できちゃうんです。」そこへふらりと現れる薄汚い男…

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