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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 31

咳き込んでむせ返る俺を振り向かせ、続いて対抗意識を燃やした銀鈴が更に酒を流し込む。女性との口づけという物はもっとロマンあるものだと思っていたが、どうやら認識を改めなければならないようだ。俺はそんなことをぼんやり考えながら、脳にアルコールが浸み、視界が回転を始める感覚を覚える。
「まったく、土下座右衛門ったら、私がいないと仕事も満足に出来ないんだから…」
そうそう、桜子がいたら丁度こんな風に憎まれ口を叩いただろう…って、本物!?
見ると幻でもなく、公主等に連れられて、シルクの黒髪をを持つ美少女が、冷たい表情で俺達を見ていた。冷然と、しかし、その瞳には安堵と憂いと、そして恐怖や緊張など、色々な感情が入り交じっているように見える。糞生意気なガキが、どこまでも虚勢を張りやがって…。
次の瞬間、俺は血気に逸って立ち上がった。自分でもよく分からないが、ふらつく身体を支える為に膝を押さえ、ぬが〜っとか、うごぁあ〜とか、奇声を発していたと思う。俺の身体はその咆哮と共に臨戦態勢となり、視界がきゅっと縮まるのを感じた。そして、公主に飛びかかろうとした瞬間、執事がおもむろに懐から銃を取り出すが、しかし、六錠の動きの方がそれより早かった。出会い頭に膝を抑えられ、踏み込みの甘くなったところへ六錠の拳が炸裂する。
酔えば酔う程に強くなる?いや、そんなはずがあるわけはないが、アルコールによって痛みが麻痺しているのか、俺は六錠の痛撃を食らってもなんとか踏み留まることが出来た。かすって脳でも揺らされた日にはかなりやばいが、酔って身体の力が抜けている分、身体が勝手に攻撃をいなしてくれるのだろう。御自慢の一発が効かなかったことに、やや驚いた顔を見せる六錠。俺はその取り澄ました顔に渾身の蹴りをくれてやった。乾坤一擲の就撃。もろに食らってぶっ倒れる六錠。まともな相手ならこれで終わりだが、勿論、六錠みたいな野獣がまともである筈もない。
悔しいことに、そして当然のように六錠は立ち上がる。足下がややふらついているものの、身体から立ち上る殺気はこれまでのものとは比べものにはならないほどで、ややもすれば、その殺気に飲み込まれそうになる。俺は相手が体勢を立て直す前に勝負を決めようと、再び蹴りを放ったが、次の瞬間、黒い影が視界の端をよぎり、突然公主がおれと六錠の間に割って入った。公主の細く白い手が俺の足首を払い、蹴りの勢いを利用して反対方向へと導く。同時に軸足が払われて俺は体勢を狂わされ、よろけたところへ公主の掌底が腹部へ撃ち込まれた。気功という、とんでもないおまけ付きで。「(…うげぇ、お銀の奴がびびる筈やわ)」
そして何を思ったのか、公主は俺に止めを刺さんとする六錠を制した。さらに執事の拳銃を握った手を掴み、ビデオの巻戻しのごとく(安全装置まで掛けて)逆回転で懐に戻させた。「争うつもりはありません」

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