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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 30

「警部は紅月姐姐の事を大変心配しておられますから、警備にはその意味もあったんですよ。恐らく紅月姐姐は今夜、此処に、菫さんと桜子さんを連れてやってくると思いますから…」フォンはそう言って満面の笑みを警部に向けた。「おい、遺言の公開は明日だろ?それがどうして今晩、公主が此処に来るって言うんだ?」俺はフォンに尋ねた。「姐姐は金庫の中身を遺言の公開までに強奪するつもりなんですよ」と、何とも気楽に応じるフォン。「しかしどういうことだ?公主はこの家の遺産の一番の相続人じゃないか。それがなんだってそんな横紙破りを…」「それは恐らく、親族や会社の人間に対する恨みを晴らす為でしょう。鳳一族の利益の為に肖星さんはみすみす殺されたわけですから…」フォンは大袈裟に肩をすくめると、そう言って溜息をついた。「いやいや、何とも悲しいことです…」
…狐め…。腹に一物含んでるのか、それとも揉めごとをこよなく愛す人種なのか?ボディーチェックこそしたが、ナイフや拳銃の持ち込み自体には(流石にお銀のニ挺イングラムは取り上げられたが…)かなりルーズだった。
ともあれ、俺達はその場に留まり、公主を待つことにした。幸い…と、いうか、もとよりそれが望みだったのかは分からないが、フォンは俺達の申し出を快諾し、食事や酒の用意までしてくれた。勿論、俺は遠慮などする気は毛頭なく、例によって口の中に手当たり次第、食い物を放り込む。ただ、さすがに酒は口にしなかったが、見ると、老酒やら年代物のワインの空き瓶がどんどんと増産されていく。
どうにもこうにも、見るとお銀と葵がまるで水でも流し込むかのように、いや、水でも此処までは飲めないというくらいの勢いで、互いに競い合って酒の空き瓶を増産している。フォンもそれを楽しんでいるのか、次々と酒を用意し、周囲の警備の人間もやんやの喝采を送っている。こんなところでは娯楽もないので、仕方がないこととは言え、あまりの緊張感の無さに俺は呆れて深い溜息を付いた。
酩酊し、虚ろな視線を向ける葵。体中から立ち上る酒精の匂いに、俺は思わず逃げ腰になるが、葵は俺の腕を掴むと引き戻し、酒の杯を突き出す。「おい、こら、お前も呑め…」俺は露骨に嫌な顔を向けるが、葵はそれが気に入らなかったらしく、おもむろにその杯をあおり…、あろう事か、あろう事か、この俺の唇を奪ってその酒を流し込んだ。俺は下戸ではないが、いきなり度数の高い酒を流し込まれて思わず咳き込んだ。周囲の連中はそんな俺達の様子に無責任な拍手を送る。

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