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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 12

パッと見は温厚で呑気な若者だが、仕事が出来る上、居合の達人でもある。正直ボディーガードがわりに付けてもらうなら絶対今泉のほうが信頼できるのだが、諸々の都合で田宮の元から離す訳にはいかないのが辛い所だ。
「遺言を開きに香港に行くって事は、嬢ちゃんも中国人なのか?」俺は空港へ向かう道すがら、後部座席の少女にそう尋ねた。「桜子。お母様が日本人で、物心ついたときからこっちの寄宿制学校に入れられたわ。御祖父様とは小さい頃に会ったきりだから、顔も余りよく覚えていないの」窓の外を眺め、こちらを見もせずに少女はそう答えた。
「そうか…」
俺は、悪いことを聞いてしまった気がして、それだけを呟く。
彼女は今まで、寂しい思いをしてきたに違いない。物心付いたときから一人、周りに誰も知り合いがいない場所に入れられ…
「ねぇ運び屋さん、あなた今あたくしのこと可哀想だと思ったでしょう?」
あまりにも間の抜けた桜子の問いに一瞬だが唖然としてしまった。その一瞬が命取りであった‥。
「勘違いなさらないでね。あたくしはあなたみたいなただの平凡な男の方が同情できるような身分の低い女じゃありませんの。平凡、貧乏金なしの人生を送っていらっしゃるであろうあなたよりは余程幸せですもの。」
‥にっこり笑顔でかましやがったよ、このくそガキ!だが当たっているだけに反論の余地もない。
「どーせ俺はただのしがない運び屋だよ!」
俺は、投げやり気味にそう言った。そこで、今まで黙って俺たちのやり取りを聞いていた銀鈴が、口を開いた。「そういえば、あんたなんで運び屋なんてやってるの?それなりの会社に勤めてるんだから、わざわざこんな事しなくてもお金に困りはしないでしょ?」
「実は、病気の妹の治療費に…。」
俺は、涙目で銀鈴の質問にそう答える。
「…嘘つき、あんたに病気の妹なんているわけないでしょ。」
一瞬後、銀鈴は断定口調でそんなことを言ってきた。

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