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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 11

「香港だと?俺には、明日も仕事があるんだ。だいいち、もともとこいつ一人で行く予定だったんだろ?」
「空港で、案内人と合流する予定だったんですよ。それが、プロ意識の欠けた運び屋のおかげで、予定が狂いましてね。」
「ぐっ…。」
田宮のその言葉に俺の言葉が詰まる。
「あんたらとあの女の子はどういう関係なんだよ?」俺は田宮に詰め寄った。しかし、田宮は冷たい一瞥をくれただけでそれには応えない。「ともあれ」田宮は言った。「君の仕事の方はいつものように手を回しておくから心配しないように。それと、ボディーガードというわけではないが銀鈴(インリン)君を同行させよう」そう言って、殺し屋の女に目を向ける田宮。中国人?なるほど、それで最初別れようとしたときに「再見」と言っていたのか。そして、けつねコロッケのお銀と呼ばれるわけだ。……って、その名前、ダブルでやばくないか!?
ともあれ俺も裏社会の噂話くらいは耳にする。最近売出し中の殺し屋で銃はもちろん、ナイフも格闘技も素人並み。にもかかわらず調子の良さと悪運の強さだけで賞金首をあげているという、少々タチの悪い女だ。
勿論、普通の女ならこうまで上手く立ち回れないだろうが、持ち前の美貌がそれを助けたに違いない。スレンダーでありながらグラマラスな身体、艶やかな黒髪に無邪気さと色気の混在する端整な顔立ち。柔らかな光沢を湛えた蠱惑的な唇。はっきり言って、むしゃぶりつきたくなるようないい女ではあるが、いかんせん性格が破滅的に悪く、歪んでいると言っても過言ではない。銃を振り回しているときなど鬼気迫るものを感じる。性格のきつい女は嫌いではないが、もう少し可愛げがあってもよさそうなものだ。
その時ドアをノックする者がいた。「失礼します」始終渋面だった田宮が一瞬ニヤけたのを俺は見逃さない。「入りなさい」少年の面影を残した、中性的な顔立ちの小柄な男が入ってきた。田宮の右腕にして愛人(あーゴホンゴホン)の今泉。本来は彼の為だけに休日出勤してきているのだ。「ご苦労様」と、屈託のない笑顔と共に俺に小型のアタッシュケースを渡す。「必要な物はそろってます。銀鈴さんの道具は現地で手配できるように…」

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