PiPi's World 投稿小説

スクリーン
推理リレー小説 - サスペンス

の最初へ
 1
 3
の最後へ

スクリーン 3

指以外にも身体中あちこち痛かったが、それ以上に精神的苦痛の方が上回っていた。警察の取り調べときたら、何分単位の行動記録まで聞いてくるし。うっかり『覚えてない』とか答えたら思い出すまで質問責めに遭う。…そして何より、手負いの獣が街を徘徊しているのだ…一度失敗してるから冷静になってるだろう…今度は余計な脅し文句もなく…。
七日にも及ぶ事情聴取は要約、終った。
けれども、誰一人として俺の話を真面目に聞き入れる者は居なかったのだ。

『…ふぅ』
デスクに鞄を置き、ネクタイを外した。
『榊先生!』
彼女は俺の担当編集者の高砂さん。
4つ、歳が離れている。
『小説のネタを考えすぎた…なんて警察も失礼しちゃいますね!』
『…珍しいね。僕の肩を持つなんて』
『何、言うんですか!先生が締め切りぶち破ってネタも考えずに毎日。ゴロゴロしてるからこういう目に合うんですよ!少しは反省して下さいっ!』
『はいはい。そんなに怒らないでよ…』
警察の言う通り、俺は夢を見ていたのだろうか?
それにしたって―――

『先生!…っ先生てばっ』
『んー?』
『それで?女の子、見捨てて逃げちゃったんですか?』
『…失礼だなぁ』
『…先生。子供の頃からそんな性格だったんですね!?』
『…ん―?』
自閉症、までいかなくとも確かにそんな時期もあった。…自分は他人に干渉しない、だから他人も自分に干渉しないでくれ、何も要らないから…。
『母さん…』

過去からの言葉。

『どうして?何で?癒嘉ばっかり可愛がるの?』

『俺は…大事じゃない?』

『………淋しい』

SNSでこの小説を紹介

サスペンスの他のリレー小説

こちらから小説を探す