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悪・即・捕
推理リレー小説 - 推理

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悪・即・捕 2

この場で一番若い(肉体的にも頭脳的にも)和田が走り出す。
「和田ちゃんはやっぱり若いな。もう走ってったよ。」
老獪な感じの漂うしかし決して嫌味ではない声が斎藤の耳に入る。
「落ちるまでどんな事になるかも考えない馬鹿は珍しくない。中には関係ない通行人の頭上に落ちる奴とかな。斎藤、ソレがわからないお前じゃないはずだ」
今まで、黙って死体の付着物を調べていた定年間近であろう初老の男が立ち上がって斎藤に食いついて来た。
「バレちゃいました?大石さんには勝てないなぁ〜」
新米刑事の和田に解説していた時とは一変してにへらと笑って言う
「誉めてもなんも出ないし、誤魔化されもしないぞ。本音を言え本音を」
観念したように斎藤は真顔に戻って口を開く。
「実は、コイツは昔からの友人なんです。絶対に自殺をするようなやつじゃない…」
「そうか…まぁ、上の連中相手に本音を報告する必要は…おっと、口が滑り過ぎたな」
その時、和田が戻ってきた。
「斎藤先輩、部屋から遺書が見つかりましたよ。やっぱり、自殺何じゃないですか〜?」
その遺書と言った物を斎藤に渡す
…普段は冷静で有名な斎藤から大きな溜め息が出た。
新米刑事が保存用の袋に入れ忘れでもしたのかと大石が袋を持って行くと、斎藤は喜んで良いのか悪いのか悩んでいた。
「手書きの遺書じゃなくて良かったじゃないか。部下に恵まれないのはお前が頑張れって事だな。はい、袋」
同情のニュアンスをたっぷり含んで肩に手を置いて大石が斎藤を励ます。
「…ありがとうございます」


場所を移し、
死んだ"白井翔子"が住み、そして飛び降りたマンションの屋上に斎藤はある人と2人で来ていた。
このマンションを除いてこの辺りに高い建物は何もなく、地上8階建てのマンションの屋上では、遮る物が何もなく晴天の青空が広がっていた。
強いて言うならば、空を見上げても屋上を取り囲む2メートルを超える金網と巨大な貯水糟が視界に入る程度だろう。
交通の便は悪くはないが繁華街から離れたここは、新宿のような都会の空気とはひと味違う清々しい風が流れる。


「人が死んでもお天道様には関係なしか」
清々しい風ではあるが、自分の心情とは別に平然と常日頃と変わらない風が少々憎たらしかった。
「ここは、いつも鍵を閉めてるんですよね?」
「はい。以前はフェンスをつけて解放していましたが、(酒で)酔ってフェンスを超えた人が出て以来」
人の良さそうなおじさんさんが斎藤の問いに答える。
このマンションの管理人で、名前は"黒縁 隆治(クロブチ リュウジ)"。
「子供が遊べるようにと解放したんですが、酔っ払いの宴会場になってしまったようで」

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