狼たちの挽歌 4
「猛さん、もういいですか〜?入りますよ〜。入りましたよ〜」
スタッフ達が帰って来たようだ。
しかし返事がない。
「猛さん、いるならいるで返事ぐらい…あれ?寝てる。
…あっちゃー、この人酔い潰れてるよ」
プロデューサーらしき男が見たのは、猛の足下にある、飲み散らかしたビール瓶の山だった。
誠三郎が楽屋に呼ばれる前、自分の番組が客の大ブーイングを食らったことに猛がヤケ酒したことは、猛以外の誰も知らない。
そして…
「うおっしゃぁぁ!師匠、絶対あんたと並ぶ芸人になってやるからなー!!」
誠三郎は燃えていた、しかしすぐに問題の壁にぶち当たった。
「よーし漫才だ!漫才やるぞーうおぉぉぉぉっ!!」
(ピタ…………)
「相方いねぇじゃん………」
「どうしたものかな…」
俺はとりあえず目に入った公園のベンチに座り込んだ。
ここまで三日間、走り通しだったのもあって正直疲れた。
体なまったな…。
さて、自慢じゃないが俺は闇社会に生きる者として、当然、堅気のように気軽に相方に誘える人間がいるわけではない。
まあ仮にいたとしても、猛の正当な後継者として認められたこの俺に、釣り合う奴など知るはずもないだろう。
……いや、もしかするといないのかもしれんな……
いかん!にやけてる場合ではない!
ともかく、人脈らしい人脈のある暗黒街に戻って相方探しするか…。
話はそれからだ。
グゥゥゥ……
その前に飯食お…。
でも金が無い。