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狼たちの挽歌
その他リレー小説 - コメディ

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狼たちの挽歌 1

突然だが、俺の名は鈴木誠三郎。俺には二人の兄貴がいる、それぞれに裏稼業にどっぶりつかった生活を送っている。かく言う俺も裏社会の顔役的存在…ではなくて、暗黒街でしがないコメディアンをして、生活している。
『暗黒街でコメディアン』
それを聞くと、普通の生活を送る人々の十人中十人が変な顔をするだろう。しかし、暗黒街ではいたって普通のことなのだ。
なぜなら、どんな生活を送る人々であっても生活の中に笑いは必要だからだ。
裏社会に生きるもの達にとって心おきなく笑える時間。バーでお笑いを見る時は、とても重要な時間の一つなのだ。
だから、ある程度面白ければ生活できるだけの金は、十二分に稼げるのだ。
そして、俺はというと…
「引っ込め!くそ芸人!」
「つまらねぇーんだよ!てめぇのギャグは!!」
これは、俺が『鼻にパチンコ玉を詰め、ろくでなしという掛け声と共に速射砲のごとくパチンコ玉を鼻から打ち出す』という新ネタをやった時の観客達の反応だ。
この様子からわかるように、俺は全く売れてない。しかも、バイトで生計をたてているという、吉○興業の売れない若手芸人の様な有り様なのだ。親類、親戚一同からは、自分の能力に見合った殺し屋にでもなれと言われている。だが、俺にはコメディアンとしての夢があるのだ。
そう、ビートゥ・猛の弟子になり、世界一のコメディアンになるという夢が!

「変なこと口走ってないで、ちゃんと見張りやっとけよ!」
今、俺に声をかけてきたのは『最上 務(サイジョウ ツトム)』。俺の、『アルバイト』仲間だ。
俺のバイトというのは、言うならば『何でも屋』というところだ。
今は、週刊誌のカメラマンに撮られた政治家のスキャンダル写真を盗む依頼をこなしているところなのだが…
「別にこれは、スキャンダルじゃ無いんじゃないのか?」
俺は、強面で知られる議員が、満面の笑みでチワワと戯れている写真を見ながら、誰にともなく呟いた。
「ほら、いろいろあるんじゃないか?イメージとか…」
俺の隣から写真を覗き込んでいた務も同じ事を感じたようで、何やら考え込んでいる。
「まぁ、とりあえずもう帰ろうか…」
俺は、そう言うと務と共に出口に向かう。
「盗んだものを返してもらおうか」
俺が、出口のドアに手をかけた瞬間に後ろから急にそう声をかけられた。
「…!」
俺は、胸元からデザートイーグルを、務は投げナイフを取り出し、反射的に物陰に隠れる。
「人の気配はしなかったのだが…」
俺は務に目で合図を送ると、手鏡を使い部屋をざっと調べる。

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