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なつらぶ!
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なつらぶ! 7

無駄にかっこよかった。
「分かったッス…会いに行きます。雲を晴らしに」
運転手さんの真似をして言うと、ニヤリと運転手さんは笑った。
「いい返事だ。さてじゃあ行こうか……」
俺と運転手さんは車に乗り、まるで敵地へと向かう騎士のようだった。
「あ……でもなんか飯食わしてください。腹が減っては戦は出来ないんで」


「ふぅ…ごちそうさんです!」
「……………イヤ…オソマツサマデシタ」
すっかり運転手さんはかっこわるくなってしまった。
何故なら俺によって財布を空にされたからだ。
先程のテンションとの落差が酷い。
さっきは
「腹か……いいだろう。好きな物を食わせてやろう」
と言い、その次に
「……ま、まだ食べれるのか君は……?」
となり、すっかり今はハンドルを握る手が弱々しい。
「あ…いや、最近まともに食べてなかったッスから。でもこれで体調はバッチリです」
「これでバッチリではなかったら恨んでいるよ」
よほど手痛い出費だったらしい。
かっこいいのは外見だけなのかもしれなかった。


「さて…着いたよ。君にとっての敵地に」
ついに、津波家に着いた。
ラストダンジョンよろしくな場所に昼間とは違う印象を受ける。
しっかりとした外観は、まるで邪魔者を寄せ付けない盾にも見えた。
「じゃ後は頼む。これが中の地図だ」
「は……!?え…中にどうやって入るんすか?」
「それは君次第だ」
「いや…これ無理なんすけど……」
「甘えるな。私だって……職は失いたくないのだよ」
ブゥーンと去って行く車。
やっぱりかっこわるいのかもしれない。
「くそ…どうすっかな……」
渡された地図を見ると、なつの部屋は2階らしい。
「ここで立ってんのも怪しいし、とりあえず入れるとこ探すか」
「あんた…誰?」
視線を地図から横に向ける。
そこには長い髪の中学生くらいの美少女がいた。
「あ…これ、うちの地図じゃん?…もしかして泥棒さん?ダメだよ泥棒は。警察が許しても私が許さん…てことでバイバイっ!!」
繰り出される俺の顎を目掛けたアッパー、を俺は後ろによろめいて避ける。
鼻を掠めたぞオイ。
「ひゅう♪やるね、お兄さん…私のノーモーションアッパーを避けたのは2人目だよ♪」
フフフと楽しそうにステップをする正体不明の女子中学生。
「ちょっと待て。泥棒じゃないっ!」
「泥棒じゃないのー……つまんねー……テンションサゲサゲだぁ…じゃあなんでうちの地図を持ってんだよー」
テンションサゲサゲって何だ。
「あ…えーと…君、この家の子?」
「私?そうだよ?津波つき(ツナミツキ)。よろしく泥棒さん♪」
泥棒じゃねぇ。
「もしかして…なつの妹…とか?」
「そうそう♪なんだ…なつ姉の知り合い?…だったら励ましてやってよー…なんかなつ姉、テンションサゲサゲでさ?今日は宿題を見てくれる日だったのに声かけらんねーじゃん?」
と言い正門から入ろうとするつき。

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