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なつらぶ!
その他リレー小説 - コメディ

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なつらぶ! 1

この夏の最高気温になったその日。
俺はあおむけで道端に倒れていた。
空は青く、蝉の泣き声と俺の腹の音が鳴り響き、照り付ける太陽の光は容赦なく空腹の俺に突き刺さった。
「あっついなぁ…そして腹減ったなぁ…」
独り言をする俺をジロジロと見ながら何人かの通行人が通り過ぎる。
もちろん声を掛けてくれる優しい人などいないし、むしろ邪魔と言わんばかりの視線を突き付ける。
「(だって腹が減ってもう一歩も動けねんだから仕方ねーじゃねぇか)」
声を出すことも辛くなり、目を閉じることにした。

暗闇の世界で感じるのは相変わらず太陽からの熱と蝉の泣き声と俺の腹の音。
そして通行人の足音。
コツコツコツコツ…みんな足早に通り過ぎていく。
このまま誰にも触れられることなく、太陽に身体の水分を吸われ、ミイラになっていくんだなぁ……と思っている時だった。
俺の頭付近で、足音が止まった。
うっすら目を開けると…そこには女性用下着があった。
純白だった。
無意識に拳を握りガッツポーズをしていた。

「なんで寝てんの?」
「え……?」

ふいに、そう声を掛けられた。
(非常に名残惜しいが)視線を上に向けると、可愛い女の子が、そこにいた。
肩先まである黒い髪、長いまつげに整った顔立ち、年齢は俺と同じくらいで、Tシャツにミニスカート(重要)、腰に手を当て、コロコロと棒が付いている飴を舐めながら彼女は俺の顔を覗き込んでいた。
「もしもーし。生きてますかー?」
ハイッ、と笑顔で飴をマイク代わりに俺に差し出してきた。
何が楽しいのか分からないが彼女は俺の返答を待っているらしい。
「もし…もーし…?」
ん?と首をかしげる彼女。
「生き……てる……」
答えた。そして同時に俺の腹が鳴った。
そうだった…俺は腹が減ってるのだった。
「おぉ?生きて…」
俺は最後の力を振り絞り、ガシッと彼女の手を掴んだ。
「は?」
行為そのものは変態なんだけど、生死に関わることだから仕方ない。
彼女の戸惑いを尻目に俺は彼女がマイク代わりにしていた飴を…食べた!
「いただくっ!」
パクッ!
「あーー!!私のあめーー!!」
頭をガンガンと叩かれながらも飴の甘さに満面の笑みを浮かばせる俺。

こうして彼女と出会った。


なつらぶ!



「飴、美味しかった。ありがとう!」
「私の飴……」
飴騒動から一時間。
糖分を摂取し、すっかり元気になった俺とすっかり元気を無くした彼女は近くの公園のベンチに座っていた。
というのも飴を食べ終えて逃げようとしたのだが、あまりにも可哀相だったので彼女と一緒にとりあえず行動を共にしていた。
「君は俺の命の恩人!」
「いちご味…」
「……美味しかったよ!」
「私の飴……」
さっきからこの調子である。
さすがに罪悪感を感じるのだが、飴一つでこんなことになるとは思わなかった。
自分のポケットに手を入れる。

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