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なつらぶ!
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なつらぶ! 5

憤りを感じずにはいられなかった。
「ちょっと待
「待ってパパ!」
俺の声はなつに消された。
ゆっくりと俺の隣りまで歩いてくる。
その瞬間、パチッとウインクされた。
そして……腰に手を当て、先程の父のように仁王立ちし、満面の笑顔で爆弾を投下した。


「この人が……私の彼氏です!!」


です…です…です……
エコーがかかったように聞こえたその一言は、最大級の混乱呪文だった。
黒服のオッサン達はざわめき、家政婦に至っては黄色い声をあげている人もいた。
俺はと言うとウインクの意味が分かり、もはや諦めの境地というか…悟っていた。
隣りには満面の笑みのなつ。
少し頬が赤いのは気のせいなのだろうか。
「お前…な……」
「ごめん、こういうこと♪」
どういうことなんだ?と言おうとした瞬間に、もう一つの爆弾が爆発した。
「みとめぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
偉く低い声で超音波を出した。
それはもう一瞬でこの場を凍りつかせた。
「認めん、認めん、認めん!!誰なんだ貴様は!あれか?誘拐犯か?身代金はいくらだ?」
父はぶっとんでいた。
「ちょっと、パパ!落ち着いて!」
「落ち着いてられるかっ!小さい頃から可愛がっていた娘を!こんな!どこのやつかも知れんやつに!渡せるかっ!」
さっと父が手を前に出すと、黒服のオッサン達が俺となつを掴まえ、はがいじめにした。
「なっ!?」
なつは父のほうに引きずられ、俺との距離が離れていく。
「パパ!どうして!」
「ふん…可愛い娘に近寄る虫を駆除するのは親の役目だ。やれっ!」

そして…黒服のオッサン達が…一斉に…俺に殴りかかってきた。

「やめてっ…パパ、やめてっ!」
「なつ。今度から変な男を連れて来たら、あぁなるからな」
「やめてぇっ!!」
なつの悲鳴が聞こえる。
あぁ…痛い。とても痛い。ただ殴られるのが、こんなに痛いなんて。
「パパ!嘘、彼氏だなんて嘘だからぁ!」
「なつ…もう、部屋に戻りなさい」
なつが泣きながら、絶対に届かない手を俺に伸ばしている。
彼女にしてみれば軽い気持ちで言ったかもしれない言葉が、こうも俺を傷付けてしまっている。
本当は、彼氏なんかじゃないのに。私のせいで…私のせいで…!
「りくーっ!!」
俺が意識を失う瞬間、なつは俺の名前を呼びながら、家に引きずり込まれた。


目を覚ますと、俺は公園のベンチに横になっていた。
既に夜になっていて、空は星の海が拡がっている。
何時間、意識を失っていたのだろうか分からない…が、全身が痛い。
口は血の味がして、それが不味くて嫌になった。
「はぁー…どうすっかな…」
お金も無いし、住む場所も無い。
そして……当たり前だが、彼女もいない。
目を閉じる。
すると闇の中で聞こえるのは彼女の声。
「(今頃……泣いてんのかな……)」

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