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なつらぶ!
その他リレー小説 - コメディ

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なつらぶ! 4

それは良い機会だったかもしれない。
正直、俺自身も「喧嘩」というものにうんざりしていた。
何故か知らんが、俺はよく「絡まれる」タイプらしい。
街を歩いているだけで喧嘩、喧嘩と変な奴がひっきりなしである。
おかげで俺はちょうどバイト中に喧嘩をふっかけられ、辞めさせられ、お金が無くなりアパートから追い出され、今日…倒れていた。
そんな状態の俺を見つけたのが…この娘、津波なつである。
住む場所が無ければ、お金も無い俺の命運は何故か彼女次第になってしまったのである。
「それで…なんで俺も連れていこうと?」
「あー…んとね?暇そうだったから♪」
「ずいぶんな言われ方だな…」
「私と同じくらいの年で、男性で暇そうな人を探してたの!」
「あ?家出じゃなかったのか?」
「ちがっ…そ、そうだけどぉ…」
そうでした。
「目的は暇そうな人を見つけることだったんだから!」
「あー…で?本当の理由は?」
「え?」
「俺が暇そうに見えたのは分かる」
暇そうというか死にそうだったのだが、今は言うまい。
「暇そうな俺を、何故、連れていくんだ?」
「それ…はぁ…」
何か言いにくそうである。
「もちろん俺は津波さんの命の恩人じゃない。それどころか逆に飴を食ったくらいだ」
「うぅ…」
「お礼なんて建前を作って……俺を何故連れていく?」
チェックメイト。王手。
俺は彼女を追い込んだ。
その時、キキッと車が止まったのである。
「お嬢様…お着きになりました」
運転手がそう言い、ドアを開ける。
彼女と一緒に降りて、そこで見た景色は……大豪邸であった。
左右どこまで続いているのか分からない高い塀に、荘厳で立派な門。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
なんて家政婦さんが並んでいる。
テレビや漫画でしか知らない世界がそこにあった。

「すげぇ……」
無意識にそう口からこぼしていた。
門から入り、庭の素晴らしいガーデニングといったものを見ながら百メートルほど歩いたところにやっと玄関を見つけた。
というか、俺が場違いで凄い恥ずかしいんですけど。
玄関には一人の男性が仁王立ちしていた。
「パパ!!」
「なつ!!」
「え?」
なつはどうやら父らしき人物まで小走りし……そのまま飛び蹴りをした。顔に。
「ぐはぁ!!」
「探さないでって言ったでしょう!」
「ぐっ…ふっ……熱烈なスキンシップだな、なつ。パパはこういうのも好きだぞぉ!」
後方に倒れながらも熱い父だった。
「だがなぁなつ!純白はいかん!黒にしろ!」
「ばかぁ…!!(キック)」
変態だった。
俺達の後方にいる黒服のオッサン達は初めて真相を知った。
そしてその父は鼻血を出しながら俺を見た。
「君か!なつを救ってくれた男というのは!」
「はぁ…はい」
「うむ!ありがとう!では帰っていいぞ!」
「え?」
豆鉄砲をくらった。
完全に理解不能……いや、理解はしている、が、あまりにも素っ気無い。

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