なつらぶ! 11
やはり見つかっていたようだ。
「そんな弱そうな貧弱ダメ男をサーバントに?なつ…冗談はやめなさい」
「嫌。サーバントの決定権はお互いの意志にある。だから私は決めました…りくをサーバントにします」
「…そんなネズミがなつを守れるとは思わないんだよパパは。パパはなつが大事だからこそ言ってるんだぞ?」
「で、でも…私はりく以外は認めません!」
これまでなつと様々な会話をしてきたが、今ほど強く頑張っているなつを見たことがあっただろうか。
後ろに、それも至近距離でいるから分かる。
彼女はその小さい肩を震わせながら父親と戦っているのだ。
きっとその顔は今にも泣きそうなのではないだろうか。
「ふむ…ではやはり、身を持って分からせるしかないということか」
父が手をあげる。
その合図は、前に見たことがある合図。
彼女の心を曇らせる合図だった。
「や、やめてパパ!りくに暴力だけは!」
「サーバントの力を試すんだ。暴力ではないよ、なつ」
嘘である。
サーバントのテストとかなんとか言い、俺をボコボコにする気である。
ゆっくりと黒服のオッサン達が迫ってくる。
「やめてパパ!」
「何言ってるんだい、なつ?テストを受けれるだけ幸運だと思いなさい?」
「やめて…お願い、やめて……」
なつは両手を広げ俺を守る姿勢になった。
「なつお嬢様…どいていただきませんか?」
「どきませんっ!」
「なつ姉……」
つきが悲しそうな声をあげ、姉の心配をする。
「…旦那様……」
「構わん……」
黒服のオッサン達が確認を取った瞬間…その手の矛先は俺ではなくなつに向かった。
「さすがにそれは困る」
基本的に私、津波つきは戦いにおいてはスペシャリストだと自負している。
今まで負けたことはずっと昔、私が小さかった頃の今は亡き師匠くらいで、もはや中学生となり体もそれなりに大きくなった私はそんじゃそこらの男共には正直負ける気がしない。
いつしか私の夢は姉の津波なつを守ることになっていた。
だから誰よりも強くなろう、私が最強なら私が姉のサーバントになればいいのだと思っていた。
師匠と出会ってからの毎日のトレーニングは楽しくて、みるみる自分が強くなっていくことが分かった。
師匠が病気で亡くなってからもトレーニングを続け、もはや限界値レベルまで達してしまったと思えた。
津波家でも私に勝てる人はいない。
もう自分が最強だと思った。
この光景を見るまでは。
「さすがにそれは困る」
津波家の腕利き達がなつ姉に手を向けた瞬間、繰亜りくはふわっとなつ姉をお嬢様抱っこをして避けた。
「うわわっ…りく?」
「不思議そうな顔をすんな。サーバントなんだろ」
そう言い、窓から降りた。
「馬鹿な!ここは二階だぞ?」
パパは驚いているが、たいしたことではない…私もできる。