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家族の絆
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家族の絆 18

「ちょ…!!赤だって…!!」
「私にはギリで黄色に見えた!!」
「ひ、人がまだ…!!」
「こっちだって人命掛かってんのよ…!!」
だからって轢かれたらたまったもんじゃない。
いつもは30分かかる距離を10分という脅威のスピードで走り切った車は満身創痍である。
「晃……無事…?」
「いや…割と限界ですヨ」
「大丈夫そうね…行きましょ!!」
車から出て、車の中から見えない部分を見る。
園崎病院駐車場爆発事件が起きても不思議じゃないくらい酷かった。
姉さんと一緒に手術室の前に行くと母さんがいた。
そして…見たことがない女の人がいた。
「母さん…!!」
「晃……」
「暖は…!?」
「一時間前から…ずっと…」
「そうか…」
「お父さんは…?」
「今、こっちに向かっていると思うわ…」
父は今朝早くから、どこかに出掛けてしまっていたのだ。
「それで…暖はどんな感じで事故ったんだ?」
「今日は…学校で課外学習だったらしいの。それで…女の子を守って…」
暖らしかった。
「申し訳ございません…!!私の管理、不届きで…!!」
見知らぬ女性は頭を下げた。
どうやら暖の担任の先生らしい。
「いえ…起きてしまったことは仕方ないです…」
母もぶつけることはないが、怒りや悲しみを隠しもっているに違いない。
ここにいては気がまいってしまいそうだったので、席を外すことにした。
「晃…どこに…?」
「外の空気を吸いに…」
あんな重い空気は吸いたくなかった。
外に行く途中の廊下で、父とすれ違った。
「晃…!!」
「父さん…」
「暖は…!?」
「あっち。今、手術中」
「…どこに行くんだ…?」
「外…空気を吸いたくて」
「すぐ戻ってこい」
「うん…」
病院の外に出た。
今日は…とてもいい天気だった。
風も気持ち良く、本当だったら良い一日になったに違いない。
手術はどれくらいかかるのだろうか…とか考えていると呼ばれた気がして振り返った。
「晃…!!」
「勝…!?なにやって…静香…?」
勝の後ろには静香がいた。
「…晃……大丈夫?」
「いや…大丈夫だけど…授業は?」
「そんなもん受けてられるかよ」
勝がなんでもないように言った。それに首を縦に振って賛同している静香。
「はぁ…勝、あまり静香に不良の道を踏ませないでくれ」
「これくらいじゃ不良にならねーよ。それに…」
「私…一人でも…来てた」
勝は、ほらな?とでも言いたそうな顔をした。
「それで…暖君は…?」
「手術してる。どうなのかはまったく分からねぇな」
「どんなふうに事故ったんだよ?」
俺は暖の事故の経緯を話した。
「さすが俺の弟だな…」
「いや、俺のだし」
「凄いね…私はそんなこと…きっとできない」
「俺の弟だからな!!」
「いーよ、お前の弟で…」
なんだかんだ言って、二人が俺を元気づけようとしていることはバレバレだった。
そして…授業を捨ててまでも来てくれたのは、とても嬉しかった。
良い友達と、彼女に知らず知らず恵まれていた。

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