家族の絆 19
「よし…じゃあ帰っかな!!」
「うん…そうだね…」
「もう行くのか…?」
「なんだ?淋しいのか?」
「うるせぇ…」
「どんなことがあっても…頑張って…」
「あぁ…さんきゅ」
「それじゃ……」
「俺の弟を頼むぜ!!じゃあな!!」
「分かったよ…またな」
去り際に、ありがとう…と呟きを添えて…。
静香と勝が見えなくなった時、姉が凄い表情で迫りよってきた。
「こーーーう!!!!」
「…何…?」
「しゅじゅちゅ…しゅじつ…!!」
「手術が…どうしたんだ?」
「そう、それ!!手術が終わったの!!」
「……早くない?」
「そうなの!?私、よく分からないから…とりあえず早く!!」
二人で手術室へ向かう。すると手術を終えた暖がストレッチャーに乗せられながら手術室から出て来た。
まだ麻酔がかかっていて眠っているようだ。
「晃!!どこに行ってたの!?」
「いや、外だけど…」
「肝心な時にいないんだから…」
「それで…どうだったの?」
その時、ちょうど手術室から先生らしい人が出て来て、こう言った。
「暖君は大丈夫…手術は成功したよ」
父さんは笑みを浮かばせ、母さんは泣きながら喜んでいた。姉さんはまだよく分かってないのか呆然としている。
俺は…そんな家族を見て、ただ単に笑っていた。幸せを感じることができた。
廊下からは雲一つ無い、青空が見えた。
一週間後…
暖は順調過ぎる回復をして、すっかり元気で入院生活を送っている。口癖は「暇…」である。
家族みんなは交代で暖の見舞いに来れるようにシフトしてあり、それがなかなか大変なのだが、なんとかやっている。
そして今日はやっと俺がシフトから外された日。別に暖の見舞いが嫌なわけじゃないのだが、今日は静香としばらくぶりのデートだった。
「とまぁ…暖はこんな感じだ」
「へぇ…良かったね…元気そうで」
水族館までの道程で、最近の暖のことを話した。静香も暖のことがよほど心配だったのか、順調に回復してることを教えると安心した顔をする。
「おばさんやおじさん…美佳さんは…?」
「母さんと姉さんはいつも通り、父さんはまたどっかいった。暖によく効く薬を探しに行ったとかなんとか」
「いい…お父さん…」
「まぁそうなんだけどな」
「でも…暖君…本当によかった…」
「あぁ…静香もせっかく見舞いに来てくれて悪いな」
「ううん…大丈夫…」
静香が見舞いに来た時はちょうど父さんしかいなくて、いろいろ説明が大変だったらしい。
「でも…初めて会ったから…嬉しかった」
「そう?」
「晃に…そっくり」
「嫌だな、それ」
水族館まで後、少し。手を繋いで歩いている。
空は青空。暖が助かった日のように、綺麗だった。
「ね…晃の家族…いい家族だね」
「そうか?普通の家族…いや、少し変か」
「ううん…とっても素敵な家族」
「あまり実感無いなー」
「暖君の病室に…必ず誰かがいる…凄い難しいことだと思う」
「…確かに…暖には悪いけど、今回の事故で家族の絆は強まったかな…?」
「晃…幸せ…?」
静香の質問に覚えがある。