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家族の絆
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家族の絆 13

それは…とっても寒い日だった。

一月五日…
雪が踊るように舞い落ちる今日は、家の中にいても外の寒さを感じるほど寒い。
こんな日はきっと小さな子供でも、外で遊んだりしないだろうなと居間でコタツに入り、蜜柑を食べながら俺は思った。
「晃…おつかい行ってくれない?」
母さんの悪魔のような宣告が聞こえた。
きっと空耳だろう。
「晃…!!ダラダラしてないで!!」
「姉さんは…?」
「逃げられたわ」
あのアホ姉め…
「分かったよ…どこ?」
「いつものスーパーマーケット♪品物はメモに書いておいたから♪」
渋々、外に出る準備をする。防寒対策を万全にして、俺は外に出た。
「うわ…さっむ…」
外はまるで世界が違った。
肌に突き刺さるような温度が俺を襲った。ただ雪が降ってないのが唯一の救いらしい。
「早く済まそう…」
俺は足早に、また滑って転ばないように目的地に向かった。
向かう途中…
壁に向かってしゃがみ込んでいる人を見掛けた。
しかしそんなのは大して気にならない。一目そちらに目を向けた後、何も無かったように歩き続けた。
「今夜は…また鍋物かな…」
などと買い物を終えて、献立を推理しながら来た道を戻っていた。
すると…
壁に向かってしゃがみ込んでいる人がまだいた。
その人がこんな寒い日に何をやっているかは分からない。もしかしたら体調が悪いのかもしれない。
でも…そんな理由なんかじゃなくて…
ただ…積もった雪に対照的な黒髪に…魅かれていたのかもしれない。
「どうしたんですか…?」
知らずと声を掛けていた。
「え……?」
俺のほうに振り返ったその人は女の子で見た目、同年代だった。
「ずっと…いるよね?」
「はい…この子が可哀相だから」
彼女の前を覗くと、小さいダンボールに…小さい子犬。
「この子…このままだと…死んじゃうから…」
その子犬は彼女の手の中で尻尾を振っている。
「君の家では飼えるの?」
「お母さんが…ダメって言う…」
「そっか…」
子犬とは対照的に、彼女は辛そうな表情をした。
「ごめんね…私…君を助けてあげれない…」
その表情は…とても悲しくて…とても…可哀相で…
「その子犬…うちで飼えるかも」
「え……?」
自分でも何を言ったのかよく分からなかった。とても無計画で…自分勝手なことを言ったってことは彼女の驚いた表情を見れば分かる。
でも…耐えられなかった。
彼女のその表情に…耐えられなかった。
「だから…その子犬、うちで飼える…かも」
「本当…?」
「あぁ…君がいいのなら、だけど」
「…お願いします」
彼女はペコリとおじぎをした。
この子犬の名前は二日後に陣と付けられた。
我が家のペットになったのだ。
「俺…三上晃って言うんだ」
「三上君…私、林静香…よろしくね?」
「林さん…な、よろしく」
空には青色が拡がっていた。

「晃……?」
「あ、わり。ぼーっとしてた」
「私は言った。次は…晃の番だよね?」
思い出した。
俺が彼女を好きになった瞬間を。

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