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亜紀13.5才
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亜紀13.5才 6

「そういえばケヌキー隊は?」
「ワシと一緒に地獄に来よったわ。で、さっき別れたんだ。よいお年をってな、ハッハッハッ」
高笑いする父親の前で亜紀は体を震わせた。
「…父さん、何で私を裏切ったの?」
亜紀の気が徐々に上がる。
そんな亜紀に父親はフーッと一息ついた。
「お前の神経を逆なでするためさ」
「え?」
亜紀は呆気にとられた。
「お前を超鼻糞神士にするにはそれしかないと思ってな」
「けっ、計算だったの?」
「ああ、うまくいくか心配だったがよかった」
「(…本気っぽかったけどなあ)」

地獄の底で灰色の曇らしきモノを見上げ、ため息をつく亜紀。
「…で、これからどーすんのよ。まさか地獄で、これからの青春を永遠に謳歌しなさいなんて言わないわよね」

「ヒヒヒ…」
突然気味の悪い笑い声を出すオヤジ。
「な、何…?」
「実はさっきこんな物を拾ってな」
オヤジが出したのは薄いA4サイズの本。表紙には『罪と罰と私』と書かれている。
ほんの少し身を乗り出す亜紀。
「で?」
「地獄行きの中でも、比較的罪の軽い者にしか配布されないすぺしゃるな本じゃ」
「で?」
「この本によるとじゃな。地獄では行った罪の分だけのポイント、つまり罰を払うように行動しなければならないんじゃ」
「で?」
「まあそう急かすな…。そこで、それぞれの行為にポイントが厳しく決められていて、例えば、『地獄で一日を過ごす』が一ポイント。『血の池につかる』は一時間につき一ポイント、などなど。
まあこんな風に生活して全ての罪を払い切れば、ここからもオサラバというわけじゃ」
パッと顔が明るくなる亜紀。
「ホントに!?じゃあ私も永遠にここにいるわけじゃないの?」
「ポイントを払えばな」
満面の笑みで娘のそれに答えるオヤジ。その笑顔はまるで慈父のようだったと、傍から見ていた赤鬼は後に述懐している。



「…それで、私の払うべきポイントってやつはいくらなわけよ?」
「さぁ、そこまではワシも…。

…おお、あそこの赤鬼に聞いてみよう」
喜び勇んで駆けていくオヤジ。
そんな父親を見て、亜紀はおそらく初めて自らの親を頼もしく思った。
しばらくの後、赤鬼に丁寧に挨拶して、オヤジが帰ってくる。その顔には先ほどからの爽やかな笑顔が張り付いたままだ。
「いくらだった?」
「九兆五百八十二億六千百八十七万四千七百四十一ポイントだそうじゃ」
「ヤァァッパリィィィーー!!!!」
ドグシャアァ!
思わず利き腕を振るう亜紀、飛ぶオヤジ。
「や…八つ当たりカッコ悪い……」


その様子を黙って見ていた赤鬼は、地面とそこら辺に落ちてた骨で筆算を始めた。
頑張って一日に百ポイント稼いだとして、地球単位で一年が確か365日だから………………………………………………………………………
まあいっぱいいなくちゃいけないってことだな。
一人でうなづく赤鬼だった。

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