密室にて 6
俺は目線を動かして行く
―眩しい照明器具
血が飛び散った天井
転がる肉のカタマリ
チェーンソーと笑顔
固定された俺の両足
患者服の裾
グチヤグチヤな腹の口―
ブツブツブツ・・・・腹の口はしゃべっている。なにを話しているか判らない。
ブチュッベチャッ・・・・
女性が肉のカタマリをきざんでいる。元がなんなのか解らない。
かさなる ふたつのおと ブツブツブチュッブツベチャッブツ・・・・・
笑い声が聞こえた。俺の顔の口から。更に重なる音。
「分かった。お前は俺で俺はお前なんだ。そういう安っぽいオチだこれは夢なんだ。自分との戦いなんだそうだろう」
笑いがこみ上げてたまらなかった。子どもの頃からゾンビ映画が好きだった。その悪影響が今になって出てきたとは参ってしまう。
見てみればチェーンソーを持った女性はどこか人形じみていた。あれはきっと人型に作った布に詰め物をして眉と目と唇を描いてチェーンソーの形の木切れを持たせてかつらをつけさせ上からピアノ線でぶんぶん操ってそうだそうでなければおかしい。こんな現実があるはずがないギャハハ。
ギャハハハハアハハハ・・・・あーおかしい。こんなに笑うのは久しぶりだ。人形は木製チェーンソーを振り回してる。ははっあんなのでよく人がきれたなあーそっか合成かCGだろ?最新映像技術は素晴らしいな。人形が近付いてくる。「次は貴方の番よ。」だって?落書きみたいな顔でも喋るんだなあー。人形は木製チェーンソーを俺の両足に振り降ろす。――ヴォンッグジュガリガリッブチブチッゴトンッ―床に落ちる俺の両足・・・これも造り物だろ?
チェーンソーを放り出して、女は俺の両足を拾い頬擦りした。
「私ね・・・もう、限界なの、ごめんなさい、ごめんなさいね。自分の身体から魚の腐ったような匂いがして耐えられない、イライラして、もう、いい加減にしてください!!」
女ののっぺりした顔が急に歪み、それで女は人形でないということが分かった。足からは滑稽なくらい血が噴出している。
「いい加減にして欲しいのはこっちだ!!」
怒鳴り返した。
女性は俺の両足を抱えたまま、じぃっと俺に目を向けている。「一体どういうつもりなんだ?!何がしてえんだよ!俺を巻き込むな!いい加減に・・・・!」『・・・フフッアハハハハハハ!』俺の言葉を無視するように笑いだす女性。ネジが狂った人形みたいだ。「切られて崩れてバラバラ挽き肉騙して騙され崩れてガタガタ匂いが消えない!臭くて堪らないわ!そうよそうなの匂い消しには血肉が1番いいから効くのよ!」女性は俺の足の肉を手で千切り始める。