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ミンナ生カシテアゲル
その他リレー小説 - ホラー

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ミンナ生カシテアゲル 8




少し離れてたところで監視映像を見ていた“アイツ”は、カカシの冷静さに少し驚いていた。
特に、“目の前の死体”に疑問を持った者は、5人目にして初めてだった。

“アイツ”が最初の時間に招待したのは誠だった。
しかし誠は裏門の前まで来たのに、入場すらしようとしなかった。仕方がないので“アイツ”は裏門まで出向いてそこで誠を眠らせた。学校の敷地外で襲うには若干の危険性はあったが、近くに民家などはないので、気にしなくていいのは17年前から分かっていた。
サプライズゲストとして“当直の死体”を3Cに転がしておいたが、彼には全く意味がなかった。
彼はちゃんとゲームプレーヤーとして参加できるだろうか……。
“アイツ”は、捕まる瞬間に見せた、誠の引きつった顔を思い浮かべて不安になった。
弥生と加菜恵は似たような行動だった。
彼女らは“当直の死体”を見た直後、腰を抜かしてへたり込んだ。さらに「第一の犠牲者は“カカシ君”……」と嘘を教えると、相当ショックだったらしく、這いつくばって逃げようとした。そんな彼女らを拘束するのは簡単だった。
琢也はバタフライナイフやら斧やらを持って鼻息荒く乗り込んできた。ヤル気十分な格好で現れた時には嬉しくなったが、目の前の死体を見るや逃げようとしたのには、少々期待はずれだった。少し遊んでやっても良かったが、次に招待したカカシ君までの時間が迫っていたので、発射型のスタンガンを使って拘束した。
彼らはカカシの様に、目の前の死体を疑う素振りも無かった。

カカシ君はいいゲームプレーヤーになるかもしれない。ゲームには好敵手がいてこそ楽しい……。

画面に写るカカシを指で撫でながら、“アイツ”は嬉しそうにニヤついた。
“アイツ”はこれから始めようとするゲームのために、17年前に生カシテアゲタミンナを“まだ”殺していなかった。
カカシが3Cにいた時間、前の4人は三階の突き当たりにある旧音楽室で眠らされていた。

カカシが教室を出たのを確認して、“アイツ”は別映像に切り替えた。
廊下をゆっくり進むカカシが映される。
そしてカカシが廊下を曲がるのを確認した“アイツ”は、今度は音を立てること無くカカシとの距離を詰めた。

“アイツ”が肉眼でカカシを捕らえた時、カカシは今、階段を降りようとしていた時だった。
“アイツ”は琢也の時と同様に、カカシ目掛けてスタンガンを撃ちこんた。
「あ、ぐあぁぁぁぁーーーー」
カカシは筋肉が硬直して仰け反るように倒れた。
たっぷり2秒、身悶えるカカシを楽しんだ“アイツ”は、動きの鈍くなったカカシに睡眠薬を嗅がせてねむらせた。

校内はまた静かになった。
高まる高揚感を抑えて、まずはカカシの携帯電話を没収した。
カカシも外部に連絡することまでは頭が回らなかったようだが、結果的にそれは賢明な判断だった。外部に連絡しようとしていたら、“アイツ”はもっと手荒くするつもりでいたのだ。
“アイツ”はカカシの両手足を縛ると、音楽室へ引きずっていった。

時計を確認する。
次の招待客の時間まで10分あった。
“アイツ”は再度、監視映像を確認した。
カメラは学校の外周を監視できるように4ヶ所と、三階建ての旧校舎の各階廊下に1ヶ所ずつ、それに旧3Cと旧音楽室に設置していた。
それを一台のタブレット端末で確認できるようにしていた。
その監視映像をザッピングしていくと、校門前の映像に桜井の姿があった。

さあて、桜ちゃんはどう動くかな?

“アイツ”は楽しそうに1階に向かった。

桜井は学校の前にいた。
「(本当に誰か来てるの?)」
よく見ると、門が少し開いていた。
「(…あいつがこの中に?)」
桜井が後退りした時だった。
「…沙織(桜井の下の名前)」
不意に名前を呼ばれた気がして周囲を見回したが誰もいない。どこかで聞いたことあるような声の気もしたが…。
校舎を見ると窓が一瞬光ったように見えた。
「(……ここまで来たんだから)」
桜井は意を決して校門をくぐった。


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