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ミンナ生カシテアゲル
その他リレー小説 - ホラー

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ミンナ生カシテアゲル 21

完全にパニックを起こした奈都は悲鳴を上げるばかりで、反撃にも逃走にも役立たない様子だった。
カカシとて正気ではいられなかったが。逆に恐いからこその反撃に過ぎない。

てけりり!

一声いなないたそいつが小便器から飛び出し、床を這いずって二人と間合いをつめてきた。
バケツを投げつけられて防御、ないし威嚇したと考えれば、打撃の類は効果があるのだろう。

「うわたっ?」

また槍が繰り出され、カカシは反射的に特殊警棒で打ち払う。
スピード的には手加減した剣道の稽古ぐらいの目で追える速度。
バケツに穴を開ける威力はあってもジュラルミンの警棒を切断する程でもない。

しかし実質刃物を持った相手、更に不定形ゆえの動きと床を這う高さからの攻撃で挙動も読み辛く、稽古通り取り押さえる訳にもいかない相手だ。

黒いスライムは、さらに突きを繰り出してくるが、カカシは辛うじて振り払うことができた。
特殊警棒の短さが功を奏している。しかし攻撃に移れるかと言うと、特殊警棒ではリーチが短いのに加え、攻撃対象がほぼ地面の高さなので難しい。
スライムはひたすら突きを繰り出しながら、間合いだけはジリジリと詰めてくる。それに合わせるように、カカシが下がる。

「赤城さん!」

カカシはスライムから目を離さず、後ろにいる奈都を叫んだ。
それでも奈都の悲鳴は止まらない。

(くっ、ダメか……)

カカシは後ろの小窓から逃げるつもりでいた。
この攻撃なら、カカシが防御で時間を稼いでいる間に奈都を小窓から逃がせると考えたのだ。しかし、彼女の精神状態からそれすらも出来そうにない。

どうやって逃げるーー。

カカシの思考が逃走へと重きを置いた瞬間、

ザシュ!

奈都が応急措置をしたあたりに、再度激痛が走った。
そこにはスライムから伸びる、もう一本の槍が刺さっていた。
槍を増やしたせいで一発あたりの威力は落ちたのだろう。
しかし傷口への痛みは、カカシの気を反らすに十分だった。

そして狙いは無防備な奈都である。

黒いスライム?はまた槍を一本に束ねると、そいつを奈都に突きだした…。

びしゃり、ぐしゃり、という薄気味の悪い、粘液質な雑音

まさか、とカカシが痛みを堪え振り向いた先。

嫌々と悲鳴を上げる奈都のデッキブラシ、ブラシ部分に黒いスライムの身体?はべっとり絡みついてしまっていたのだ。

「え?ちょっと?やだ?取って?」
「うわ?危ない!こっち向けないで?」
「てけりり!てけりり!」

そいつがブラシを壊すか何かをすれば、すぐにまた復帰するだろうけれども今の所、ブラシの長柄に阻まれ奈都には届かない


「これ?どうしよう?」
「どっか捨てろ!」

どっか捨てろ、その言葉通り奈都が捨てたというべきか、黒いスライムが暴れるせいで、手が滑って放り出したというべきか。
とにかく不定形の生物と共にデッキブラシが飛んだ。

その先

和式トイレの個室、デッキブラシの頭からそこへ『着水』した。
しかも微妙な故障で茶色い汚水をためた便器の中に、である。

「てけりり!!」
「うわっ?汚い!」
「えっ?ごめん!」

どこまで汚水か触手かわからなくなったそいつは、兎に角必死で暴れ脱出の手がかりを掴んだ。

しかしそれは、水洗レバー。

「あばぁあああ?」

それは水流だったのか、断末魔の悲鳴だったのか、わからない。

カカシが生死確認のため、適当に掃除用具を投げつけてみるが、反応はない。
(そもそも生物だったかが不明)

沈黙、一応の危機は去った。


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