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ミンナ生カシテアゲル
その他リレー小説 - ホラー

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ミンナ生カシテアゲル 19



アイツの仕業だろう、頼んでもいないのに勝手にTVが点いた。

モニターに四分割のカメラ映像…リモコン操作してみると、それなり全域カバーしてあった。
設置がどことなしちぐはぐなのは、多分アイツが仕掛けたのと元々の設備、両方だからか。

細かい所は使い魔でも使うんだろう。

アイツは万能の魔術師気取りだけど、実際はこうしてストーカーの延長線に過ぎない。

拾い物の力で色々と勘違いした素人、放っておけば自滅する。

丁度今映ってるモニターのひとつに、赤城奈都と加賀真吾らしき姿があった。

ご苦労だこと。



僕は赤城さんに断りを入れて、トイレに行く事にした。
無論、僕は赤城さんの失禁どうこうには触れはしなかったが、少々複雑な表情で承諾された。

早く済ませたい所だが、まずは安全確認。

廊下の角でスパイ映画さながら行先を確認する。
異常無し。

「カカシ君」
「うわぁ!」

心臓がちょっと止まった気がする。

赤城さんだった。

「保健室で待ってるんじゃなかったの」
赤城さんはモジモジして、
「一人じゃ心細くて」
と伏し目がちに言った。
「わかった。じゃあ一緒に行こう」

と言っても、トイレはすぐそこなのだが……。

トイレ入口で聞き耳を立てた。
音はない。
さらに、中に入って個室を1つずつ確認。
なにもいない。

そこでやっと一息つき、僕は小便器の一番奥を陣取った。
廊下から「カカシ君、大丈夫?」と奈都が消えそうな声をかけてくる。

「え、うん。こっちは大丈夫」
若干困ったが、返事を返す。女の子と話ながら用を足すのも変な気分だ。
それでも途切れることなく奈都は話しかけてきた。暗い廊下で一人でいるのが不安なのだろう。

だったら、保健室の方が気が休まると思うのだが……。

結局、ずっと話ながら用を足す羽目となってしまった。
用を済ませた僕は、トイレの小窓から何気なく外をみた。
月明かりがぼんやりと校庭を映している。

遠くに鉄棒やブランコが見えて、昔のままのそれが懐かしかった。
その隣には、プールがある。

そう言えば、夏に骨折したせいで、3年生の夏はほとんどのプールに入れなかったっけな。

そんな記憶が甦ってくる。
と、そこで何かが動いていた。
月の光が水面で乱反射して分かりにくいが、気付いてしまえば誰かがいるのは間違えなかった。

「赤城さん。ちょっと来てくれないか!」
「どうしたの?」
「プールに何かいる」
さっきのマネキンの様な、得体の知れない物の可能性もあるので、“誰か”ではなく“何か”と言いかえた。

赤城さんは男子トイレへの抵抗感からか、ひょっこり顔だけ出して「しつれいしまーす」と申し訳なさそうにしていた。
「あれ、何だと思う?」

僕が窓の外を指差すと、赤城さんは窓際まで来て目を凝らせた後、
「ヒト……じゃない?」
「やっぱりそうかな……」
「何してるんだろう?」
「プールサイドに上がりたいんじゃないかな?」

丸々したシルエットも重なって、“それ”は、まるでセイウチが陸に上がるのに失敗している様で滑稽だった。
「どうする?」
僕は言葉少なく赤城さんに聞いた。




「どうするって?」
奈都はカカシの言っている事が分からなかった。

「あれを助けに行くべきか」
カカシが続ける。

「あれ、誰なの?」
「わからない」
「わからない……って。これが罠で、アイツの使い魔とかだったらどうするの。それに……」
と言って、奈都はプールまでの道順を想像した。方法は少ない。
「運動場を堂々と通るか、せいぜい学校の塀伝いに隠れた気になって行くしかないんだから、アイツらに見つけて下さいって言ってるものよ」
「確かにそうだけど。赤城さん、ルール1を覚えてる?」
「なんだっけ?」
「『生存者7人で協力して殺人鬼を倒すこと』」
奈都はメールを確認した。確かにそう書かれている。

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