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ミンナ生カシテアゲル
その他リレー小説 - ホラー

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ミンナ生カシテアゲル 16

「あるだけ持ってきたんだけど、大丈夫そうかい?」
「うん、取りあえずこのジャージ上下…ならいけるかなぁ?」

幸い、それはカカシが最初に目星を付けた服だった。

アイツから着替えを用意しろ、という一方的なメールには面食らった。
カカシにしてみれば事情がわからず多少の大小が合わなくとも融通が利くのではないか、と見当をつけて真っ先に持ってきた。

さっきの奈都はほぼ部屋着にサンダル履き、近場のコンビニまで買い物に出る程度の姿だった。

カカシの知る限り奈都ぐらいの一常識を持ち合わせた女子…いや女性なら、スカートは避けてズボンぐらい用意して来るだろう。

「あとスニーカー、来客用って書かれちゃってるけど、サイズ合うの探してくれ。」
「うん、ありがと、カカシ君って何かと出来た大人だね。」

カカシはパーテーションの下から雑に靴の収まった籠を押し込み、手先で『いえいえそれほどでも』といった仕草を返す。

何かと準備不足な奈都、本来彼女は来ないつもりが、何かしらギリギリで来なければならない事情があったのではないかと、カカシは推測した。

「そういえばカカシ君って今お仕事何してる人なの?」
「スーパーの店員、正社員になって三年目だよ。」

カカシは時間と一般常識の許す限り準備を整えて来た。
彼の職場…スーパーでの雑用に使う作業着と安全スニーカー。
それと多少の飲食物に工具類、防犯用の武器といった程度。

カカシがそうした持ち物や身の回りを点検している間も奈都が色々と話し掛けて来る。
彼の傷は浅かったが出血は止まらない、互いの不安を紛らす為、奈都の雑談につき合う事にした。

お互いの近況に始まり話題はとめどない。

「ああ、僕もちょっと迷ったけど常識的に考えると、なぁ?」
「流石に猟銃まで持ち込んでたら、同級生の犯罪者デビュー疑っちゃうわよ。」

実の所カカシは社会人になるなり猟銃免許を取得していた。
時期的に実弾を猟用・射撃場での練習用として保有していたが、正規以外の持ち出しは違法。
日本刀や弓矢といった類なら簡単に思われがちだが、やはりこれらも法令に即した条件が発生する。

百歩譲って自宅にアイツが攻めて来たならそうした凶器の使用も、緊急回避として許される可能性が(少しは)あるだろう、カカシの猟銃購入はそうした用心だ。

凶器の携行は何かしらの弁明を用意しても防犯具のレベル。
どれだけ無理をしても工具類かキャンプ用品の範囲だろう。

(今の所おおむねカカシと奈都が前者、琢也が後者にあたる。)

反対に抗弾用や抗刃用の防具さえ、近年は悪用防止に伴うメーカー側の自粛で、警備用以外だと入手困難である。

「カカシ君がそこまでやっちゃう人だったら、ここまで信用してないよ。」
「そりゃどうも。」

第一、奈都はアイツが銃弾や刃物を使ってどうにか出来る相手ではないという確信があった。

カカシも薄々それを理解する出来事があった。
カカシは職場の防犯訓練は積極的に参加し、実際に抵抗する万引き犯や酔客を取り押さえた経験もある。

アイツが武器を出していないタイミングを見て腕を捻り上げた。

関節自体は簡単に決まった。

その状態から達人の返し技でもなく、文字通りの腕づくで振り解かれた。

左足の銃創はその直後に撃たれた傷だ。

かじった程度のカカシでも解かる、訓練や才能だとかではない、人外の力。

「おまたせ〜。」
「ん?大丈夫?」

ジャージ姿にジャンパーを着込んだ奈都は、さながら体育教師にも見えた。
彼女はあれこれ近況報告をした中で、実際に教員を目指しているという話、将来的に全くの間違いはないだろう。

それはそうとカカシが大丈夫かと訊ねたのは、奈都がしきりに乳房の下側をさすっていたからだ。

誤解招く前にカカシは目線を外して状況を推理してみた。
胸周りの布地だけ余裕がなく、無理にチャックを閉めようとして噛まれた様だ。

「いいよ…気を使わなくて…。」
「あっ、はい。」

ある程度でも、チャックを閉めないと邪魔くさい上に腹周りが冷える。
ジャンパーの方は完全に前が閉じなくなっており、軽く胸元を強調する結果となっていた。

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