PiPi's World 投稿小説

ミンナ生カシテアゲル
その他リレー小説 - ホラー

の最初へ
 11
 13
の最後へ

ミンナ生カシテアゲル 13

そう言いながら三階からの高さで、しかもダストシュートからでも視認できる視力、やはり常人離れした殺人鬼。

「悪運強い奴だなぁ、柔らかいゴミ山に落ちたみたいだ。」

そんな事は聞いていない、奈都の怒りは頂点に達していた。
おぼつかない足腰を気力で支え、奈都は再び立ち上がった

「乗ってやるわよ、ゲームとやら。」
「おっ?いいねぇ〜?不屈のヒロイン誕生?うっふふぅ!」

相変わらずふざけた奴、そして冗談みたいな『ゲーム』とやら。

奈都には勝算があった。

アイツが語るに落ちたのかゲームのルールで伝えたのかは解らないが、完成品の御札かそれに相当する何かが存在して、それがあれば勝てる、

確実性はなくとも可能性はある、今この場ですべてを諦めて殺されるよりは、はるかにある。

「さっきのを最初の仲間キャラに使わせてみようかと思ったんだけど、あの通り。」

この殺人鬼の口振りは本当にゲーム感覚で身の毛がよだつ。
だが奈都は挫けそうな身体に鞭打ち、腕組みしてアイツを見据え、目線で命じる様に話の続きを促す。

「代わりにカカシ君と合流して貰うね?」

アイツは壊れた戸板の下から細身のリボルバー拳銃を拾い、硝子片や埃を払う。

「彼また左足に怪我しちゃってさ、本当にカカシ君なんだ。」

奈都には大体の見当がついた。
カカシは反撃や逃走を試みたか、アイツの気まぐれで撃たれた、というのが正解だろう。
カカシ、奈都の記憶にあるニックネーム、差別だから止めようとホームルームで取り上げた。
言い出しっぺに謝罪させた上、カカシ本人も気にしないでいいと、和解の方向で解決した案件であった。

「カカシ君は軽い手当で仲間に出来る、実際イージーモード設定だよねコレ?」

もしもさっきの凶暴チビだったら難易度ハードどころの騒ぎじゃないだろう。
アイツ曰く元自衛官だとかで確かに腕っ節は強そうだったが、援軍を呼んだりマシンガンやバズーカを調達出来るわけでもない。
そもそも自衛隊クビとか人格に問題がありそうだし、奈都自身なんだかああいうタイプはは生理的に無理。

対してカカシは人当たりの良い部類で、クラス行事にもぼちぼち協力的だった。
彼なら奈都と面識の薄い人との橋渡しにもなるだろう、が…。

「加菜恵ちゃんじゃなくて残念だったかなぁ?ウフフフフ!」
「え…。」

アイツにさりげなく弱い所を突かれ、奈都は毅然とした表情を崩し瞬きを繰り返す。
この殺人鬼は何かと悪知恵が働く、油断出来ない奴だ。

「ナッちん的にはさ、他は結構どうでもいいんじゃない?」
「そんな…私は…みんなを…。」
「ナッちん『その他五名』の名前と特徴、一致する?」
「それとこれとは話が…。」
「一緒だよ。」

アイツの言葉には侮蔑と、僅かな怒気が含まれていた。

「君は『みんな』って一括りで一人一人の個性なんて全く考えてない。」
「大人しい子を引っ張ったり、不良っぽい子をたしなめたり。」
「一人一人の事情なんて知らないで善意の押し売り。」
「面倒見の良いフリして…」
「リーダーぶって上から目線…」

まるでアイツの幻覚が分身して奈都を取り囲み、まくし立てて来る様な錯覚。

奈都は『違う』と言い返せなかった。



わたし、もしかして『みんな』から、そんなふうにみられていたの?

「泣かしちゃった?下から上から?もう大変っ!」

私、余計なお節介でどんだけやらかしてきたんだろ。

毎月一回、給食センターが休みでお弁当の日、家庭問題のある生徒は兎に角アレな日。
いつもおかずが小魚と漬物だけの子、背が低くて栄養失調っぽかった。
私の大好物だったカニクリームコロッケあげたら、アレルギーで病院に運ばれた。

クラス会のダンス。
ペアになった女子の手を握れなかった恥ずかしがり屋さんがいたから、催促して握らせた時。
ペアの女子の方がもっと恥ずかしがり屋さんで大泣き。
彼が痴漢したんじゃないかって誤解されて大騒ぎになった。

あとプールの着替えで、まだ小学生低学年なのに一人だけアレだった男子。
私は怪我か病気と勘違いして…。

私色々あったけど、どれがどの子だったか全然覚えてないし。

アイツが言うみたいに無責任なありがた迷惑。

SNSでこの小説を紹介

ホラーの他のリレー小説

こちらから小説を探す