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悪夢
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悪夢 7

「―っうるせえんだよ!」

――バキッ

「あっ・・・・」顔を押さえてうずくまる少女。俺は少女を殴ってしまった。「・・・そんなにオルゴールが欲しいの?」顔を押さえたまま少女が尋ねる。「・・・・・。」俺は自分のしたことにショックを受けて何も言えない。「・・・・確かに私も難しい約束を貴方に強いていたわ。だけど何もここまですることはないじゃない。」少女が顔を上げる。右目の周りが赤く腫れている。「・・・ごめん・・・・」俺は呟くように謝る。
「殴った事は許すわ。でもオルゴールが貴方の物になるのは許せないの。」
だから、このオルゴールが欲しいのなら、あなたが私のものに…。
最後のセリフを彼女は口にせず、無言の中で伝えた。
「…それでも、欲しい?」
子供の俺は、迷わず答えた。
「ほしい…」

はっと我に帰る。俺は廃墟の中で倒れていた。
…夢…。
…どこからが夢だ?
今の記憶もだが、その前の女性すらなんだか夢だと思える。
廃墟の中に、人の気配はない。
俺はここで、白昼夢を見ていただけ?
そのとき、ふいにひどく懐かしい旋律が聞こえた。
どこか悲しげな、ゆっくりとした調べ…。

俺は音を頼りに音楽が流れてくる部屋をさがす。――どの部屋だろう。たくさん部屋があるのに俺は迷うことなくその部屋に着いた。その部屋は豪華な内装のホールだった。広いホールの真ん中にピアノがある。そのピアノを弾いているのはあの女性だ。
弾いているのは――あのオルゴールの曲・・・・
冷たい月の光りが女性とピアノを照らし出す。まるで童話のような幻想的な雰囲気だ。柱時計が真夜中になったことを告げる。ふと女性が演奏する手をとめた。「・・・あの日もこんな感じだったわね。」女性が昔ばなしをするようにささやく。

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