PiPi's World 投稿小説

悪夢
その他リレー小説 - ホラー

の最初へ
 1
 3
の最後へ

悪夢 3


俺は記憶の糸をたぐりよせる。確かに知っている。―タンタンタタタン・・・・思い出した。この曲は、まだ俺が幼い子供だった頃毎日聴いていたオルゴールのものだ。父親がお土産として買ってきて俺にくれた。仕事ばかりでほとんど家に居なかった父さん。だが、曲名が思い出せない。しかし、また1つ手がかりが増えた。

気分が良くなった俺はパソコンの前に座り、原稿の続きを打ち始める。今書いている原稿は刑事ものだ。犯人に女刑事が自首を促す場面。1番の見せどころだ。
そのとき、唐突に思い出した。
女刑事が犯人を追い詰めている廃墟――
これは、実在するある廃墟をモデルにしていた。
俺が子供のころ住んでいたいなかにあった、古ぼけた洋館。
子供のころ、俺はよくそこに忍び込んで遊んでいた。
いつだったか、そこであるものを見つけたことがある。

木製の、小さな小箱。開けると、中でゆるやかな曲とともにバレリーナを模した人形が回りだす。
そう。あのオルゴールだ。
俺は再びパソコンを閉じた。
そして財布を持ち、コートを着る。
このままじゃ仕事が手につかない。俺はいなかへ行ってみることにした。

歩いて駅まで行き電車に乗り込む。一時間程で乗り換える。ここからは私鉄に乗る。窓口で切符を買う。JRよりかなり高い。さすが日本一高い鉄道だ。暫く次の汽車は来ないらしい。俺はベンチで待つことにした。この駅にくるのも久しぶりだ。学生の頃は良く利用していたのに。――エンジン音を響かせながら汽車が来た。肌色の車体にオレンジの線、フカフカのオレンジの座席に少し黄色っぽいガラス。昔のままだ。懐かしい。俺は汽車の揺れに身をまかせた。目的地まではまだ遠い。

SNSでこの小説を紹介

ホラーの他のリレー小説

こちらから小説を探す