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後ろの人
その他リレー小説 - ホラー

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後ろの人 6

私は、昔の私を背に、妹のもとへ向かった。いつの間にか体が、ずいぶん前の、子供のころにもどっている。
あの子の手を握った瞬間、昔の私の姿が消えた。彼女は、存在しなかったのだ。
ごめんね。
あなたも、本当は、こうなることを願っていたんだよね。
だから、妹の姿で…。

  「行こうか…」
  「どこに?」
  「…川に、遊びにっ!」
    「うんっ!」

「わたし、お姉ちゃんと遊ぶの大好き!」嬉しいな。妹は笑う。私もつられて笑ってしまう。私達は笑いながらセミの鳴き声に包まれて、川へと向かう。途中でヒマワリ畑をみかけた。どのヒマワリも太陽をまっすぐに見ている。「・・・すごいね。」私は言う。「うん。すごいキレイだね!」妹はとてもはしゃいでいる。・・・・・・・川に着いた。とても大きな川だ。さんさんと照りつける太陽の光を受けて、きらきらと輝いている。水は澄んでいて、小さな魚が泳いでいるのが見える。
私は川に近付いてみる。水面にはショートカットで黄色いワンピースを着て水色のサンダルを履いている私が写る。前髪を水色のヘアピンで留めている。誕生日のお祝いに母からもらった物だ。妹が笑顔で声をかけてくる。「はやく遊ぼう!お魚がいっぱいだよ!」「うん。そうだね。」私は今子供なのだ。精一杯楽しもう。私達は浅瀬で、水かけっこをしたり魚を追い掛けたり笹舟を流したり川原の石を川に向かって投げたりした。私達はたくさん笑って時間も忘れてはしゃいだ。
ふと気が付くと空が朱く染まっていた。夕暮れ時・・・・。妹がそっと手を握ってくる。「お姉ちゃん・・・」その顔は寂しそうな笑顔だった。私は妹の手を強く握る。「・・・大丈夫だよ。」あの日、間違えた事を元に戻すだけだから。怖くなんかない。「これからはお姉ちゃんが、ずっと一緒にいるよ。」「ほんとうに?」「うん。本当に。約束するよ。」私達は永遠に離れない。私達は手を繋いだまま川の中央部に向かう。この川は真ん中にいくほど深くなって流れも急になる。私達は迷わず進む。

妹は立っているのも大変そうだ。そろそろだ。「大丈夫だよ。怖くない。ずっと一緒だから。」私は自分にいい聞かせるように妹に言う。妹は安心したようだ。「ありがとう、お姉ちゃん。わたし嬉しい!」だってずっと独りだったから。でも、もう寂しくないよ。

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