六花 10
亜理礎の聞き返しには応えない。
その代わり
「あなたの問いに俺は答えません。その目で見て知ればいい。御真木の大王の治めるこの地がどのようなところなのか。あの童女が何者なのか。俺が隣にいてそれを助けましょう。」
微笑みながら提案してやった。
亜理礎もふっと笑った。
年相応の幼さが初めて見えた瞬間だった。
「俺がいる限り、あなたには指一本触れさせませんよ。」
刑部の気障な言葉に、
「もう二度と今日のような失態はおかしません。それに剣はきっと私の方が強いですから。」
亜理礎は、冷たく言い放つのであった。
その耳が少し赤くなっていることに、刑部は気付いてやはり小さく微笑んだ。
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