PiPi's World 投稿小説

魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

の最初へ
 8
 10
の最後へ

魔皇帝伝説 10

「感動の再会はそれぐらいでいいかな…?」と、グール侯爵が椅子から立ち上がり、ゆっくりと壇上から降りてきた。
引きずるような赤いマント。服装は、上から下まで豪勢な金銀色。ブーツを鳴らして歩み寄ってくる。
その姿をグラウドは見下ろす。
背が低く、剣を振るう事も出来そうにない、かなり太った体格。
秀でた額、金髪の髪と同じ色の髭を伸ばしている。
ギラギラとした瞳は欲望に満ていた。
「さあ、我が妃よこちらに来るがよい。長旅で、疲れていよう」
グール侯爵はそう言うと、レインに手を差し伸べる。
「………」
「どうした?我が妃よ…?」
「……?あの男はわたしに言っているのか?グラウド」
レインは不思議そうに眉をひそめる。
「そうみたいだな。まぁオレたちも、説明していないからな」
「どういうことだ!」グール侯が怒鳴った。グラウドと無表情なレインを除き、驚いた顔が一斉にグール侯爵の方を見る。
「ダイガ王の叔父にあたる、ロ−ウェン公爵が、この城に幽閉されているな?」
「!?」
グラウドの、この一言がグール侯爵を驚愕させる。ローウェン公爵は優秀な人物でダイガ王の父、セイブ王は死ぬ間際息子のダイガでわなく弟のローウェンに王位を譲ろうとしていた。それを知ったダイガはローウェンに反乱の罪をきせて幽閉してしまったのだ。
それから五年、ローウェン公爵の行方を知る事は誰にも出来なかった。
グール侯の表情を見て、グラウドは自分の読みが当った事を確信する。
ロイアの町にある、このモリカ城は、周りを山々に囲まれた……いわば自然の要塞。山という城壁に囲まれ…。これ以上ローウェン公爵を幽閉するにふさわしい場所はないだろう。
グラウドは、あらゆる可能性を考慮して、この場所を三年も前に特定していたのだ。
 
「なっ…なぜ貴様がその事を知っている!」グール侯爵は驚愕に震えながら、どうにか声を出す。
「そんな事より、ローウェン公爵の幽閉場所に案内してほしい」
と、不敵に笑いながら話すグラウド。
「ふざけるな!!」
グール侯爵は怒りに震えながら怒鳴る。
「……ローウェン公爵の事を知られたからには、この城から生かして帰すわけにはいかない」
と、グール侯爵は右手を挙げる。同時に後ろに控えていた近衛騎士10名が剣を鞘から抜く。
「安心しろ!女達は殺さん。この城に幽閉して、たっぷりと可愛がってやる…くっくっくっ。そっちの女もなかなか可愛い顔をしているしな……」
そう言うと、グール侯爵はニヤリと笑いシイナを睨みつける。
シイナは、寒気がしたように肩を震わせた。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す