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魔皇帝伝説
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魔皇帝伝説 11

「おっおい!やばいぞグラウド!!」
ジェスがグラウドに呼びかける。しかし、先程まですぐ近くにいたグラウドの姿が消えていた。ただ、先程までグラウドが立っていた大理石の床が強い衝撃を受けたように砕けていた。
同時に―
バキッ!グキッ!グシャ!!と、金属が曲がったような肉が潰れるような音が辺りに響く。
グール侯爵は後ろから聞こえた、その異音を確認する為、後ろに視線を向ける。
そして―
グール侯爵は信じられない光景に驚愕する。男が立っていた。先程まで目の前にいた男だ。その男の瞳は、赤く赤く光り輝いていた。

「悪いが俺はもうただの傭兵じゃないんでね!!」
とグラウドはグール侯爵にささやいた。
 
グラウドの周囲には、巨大なハンマーで潰されたように変形した鎧を着た近衛騎士10名が血を流して倒れていた。
装飾された窓から差しこむ光はグラウドを照らし、光と共に訪れた静寂の中でグラウドは漆黒のマントをなびかせ、深紅の鎧に覆われた拳からは返り血が流れ落ちていた……。
 
この場所にいる全てのものが、息をするのも忘れてグラウドの姿に見入ってしまった。
次の瞬間、接見の間に三十人以上の騎士が、なだれ込んできたあとも、普通は感じる混乱や恐怖は、レインやシイナ達には無縁だった。
それどころではない。血が沸き肉が踊った。これからどうなるとか、そんなことは脳裏に浮かびもしなかった。グラウドが勝つと確信していた。
負ける戦いをするわけがない。勝てるから、受けて立ったのだ。
 
そして、その予想が現実になる。意外なかたちで……。
「よぉ!グラウド。城内の制圧は完了したぜ!!」
と、後から接見の間に入ってきた騎士たちの、隊長らしき男が話しかけてくる。
「思ったより早かったなマルス……」
グラウドはマルスと言う名前らしい、騎士隊長に答えて微かに微笑んだ。
接見の間の中央で、グラウドは一人たたずんでいた。
マルスの目には、グラウドが戦闘の興奮で火柱のようなオーラを纏っているのがわかった。余韻を残して立つ様は野性の狼のようであり、一方、赤い瞳は澄みきっていた。
目が合うと思わず震えが来た。マルスは首を竦めて苦笑した。
「つくづく、恐ろしい野郎だな。お前は」
彼は怪物だ。地方騎士の中でも選り抜きの近衛騎士10名を打倒している。しかしそれでいて知略で城を制圧した。

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