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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 4

「森から出ていきなさい……」
彼女の美しさに呆然としていたグラウドたちに、感情の籠もっていない冷たい声が響く。「あっ、あなたが千年魔女レイン……?」
いち早く正気を戻したシイナが聞き返す。
「うむ……」
レインは頷く。
「お、オレたちはレインさんに領主樣の所まで来ていただきたいだけなんですよ…」
キッドが焦りながら説明する。
「……攻撃する」
レインが言葉を終えると同時に、細い純銀の槍の穂先のようで、なめらかな表面の円錐形の武器が、キッドの右足を包む鎧の抵抗もなく貫いている。
「ぐあっ……!?」
足を貫かれた痛みに、顔を歪めるキッド。
純銀の武器は、レインの腕輪から飛び出しており、その正体不明の武器は、レインが引っ込めたというより、それ自身の意志で動いたように、キッドの足から抜けて、腕輪に消える。
「おいおい…話し合いもなしか…」
キッドを心配しつつ、ジェスは腰の剣を引き抜いた。
しかし、長剣を握っているジェスの腕が正体不明の武器によって貫かれる。
「くっ……!?」
痛みで剣を落としながら、その細い槍状の武器の信じられない速い動きに驚愕するジェス。
「なんなの……!!」混乱したシイナが、手持ちのナイフを全部、レインめがけて投げつける。
キィンキィン!と腕輪から数本の純銀の武器が、触手のように生えてナイフを全て叩き落とす。
そのうちの一本が、シイナに襲いかかる。
「ちっ!?」
グラウドは大剣を抜き、純銀の武器めがけて疾走する。
キィン!純銀の槍がシイナにとどく寸前で、グラウドは大剣で叩き落とす。
「ほう……」
レインの赤い瞳に興味の色が微かに浮かぶ。
「……その武器は何なんだ?」
シイナの正面に、守るように立ちながら質問するグラウド。
「ミスリルグレブ…」レインが答える。どうやら、それが腕輪武器の名前らしい。
「……シイナ!たしか、回復魔法の付与された応急シールを持っていたな?」
グラウドがレインを見据えたまま確認する。「ええ……」
シイナが答える。
「それでジェスとキッドの治療をしたら、二人を連れて街へ帰れ」「でっでも…報酬が……」
グラウドの言葉に納得できないシイナ。
「どのみち、命がなければ報酬も貰えないさ…。お前たちが逃げるまでの時間は、オレが引き受けてやる」
グラウドは、そう言って、不敵な笑みを浮かべる。
「でも……んもっう!わかったわよ、グラウドも死なないでね」
決断したシイナはすぐにジェスとキッドの治療に向かった……。
 
しばらく、グラウドとレインが対峙していると、治療を終えた二人を連れてシイナが街にもどって行く。
「お前は、逃げないのか……?」
レインは、感情の籠もらない冷たい口調で話す。

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