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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 28

透明の刃が胴を真っ二つにしたと思った瞬間、グランドはその場で一回転してその一撃をかわす。
「なに……!!?」
ゼロスは、目を見張った。
ゼロスが自信を持って放った渾身の一撃は、僅にグランドの革鎧を傷つけただけで空を切ったのだ。
今度は、ゼロスが無防備な体勢となる。
そして、グランドは回転した振り向きざまに、上段から大剣を振り下ろす。
ゼロスは、無理な体勢から、後ろに飛び退って転がるように攻撃を避けた。
ゼロスは、そのまま転がるようにしてグラウドから離れると起き上がって体勢を整える。
「俺の勝ちだ!」
体勢を整え、こちらを憎悪の目で睨み付けてきたゼロスに対してグラウドは剣を振り下ろした体勢のまま勝利宣言を言い放つ。
「な…何だと?たかが一度、我の剣をかわした位で勝ったつもりか黒の傭兵!」
「…まだ気付いていないのか?…自分の周りを見てみるんだな」
「何?…こっ…これは!?」
自分の周囲を覆っていた黒い霧が消えている事にゼロスは驚愕し、同時に霧を吹き出していた指輪の黒い宝玉が砕け散っている事に気付く。
「……貴様…最初からこれを狙っていたのか?」
長い白髪の間から、鋭い瞳を細めながらゼロスは呟くように聞く。
「…ああ、勘だけでは何度も、お前の剣を避けられそうになかったからな」
「わざと隙を見せて、誘いこんだわけか」
「そうだ。いくら速くても狙い箇所さえわかっていれば避けるのも容易いからな」
とグラウドが答えると、ゼロスの瞳から怒りも憎しみも消え、まるでグラウドを羨望するように目を光らせた。
「……人間とは…これほど強くなれるものなのか?…人間の限界を見限りヴァンパイアとなった我には貴様は眩し過ぎる」
「…俺はエンド最強の傭兵などと呼ばれているが、自分を最強などと思った事は一度もないな。それに身体能力の限界が人間の強さの限界とも思ってもいない。事実、いまお前と対峙しているこの時も俺は強くなっているからな」
「…そうか、身体能力の限界が人間の強さの限界ではないか……。くっくっく、貴様は面白いな」
ゼロスは笑みを浮かべると、さばさばした表情で刀を構えた。
「さあ、最後の決りをつけようか」
「ああ……」
グラウドは答えると、大剣を無造作に構え、相手を見据える。
 
風が砂埃をともなって二人の間を吹き抜けると――。
 
先手はゼロスがとった。
ヴァンパイアとしての並外れた瞬発力をいかして、間合いを一気に詰める。
スピードをいささかも落とす事なく、地面に足跡がつく程に体重の乗った重く、速い一撃を繰り出す。透明の刃は閃光と化し、グラウドの急所へと吸い込まれていく。

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